大好きなアイドルが同じクラスで隣の席…! 推しと一緒の青春が尊すぎる『推しが隣で授業に集中できない!』

マンガ

公開日:2021/5/3

『推しが隣で授業に集中できない!』(筒井テツ:原作、菅原こゆび:漫画/講談社)
『推しが隣で授業に集中できない!』(筒井テツ:原作、菅原こゆび:漫画/講談社)

※この記事は本作の内容を含みます。ご了承の上お読みください。

 もし大好きなアイドルが同じ学校に通っていたら――。突然だがあなたは、そんな妄想をしたことがないだろうか? キラキラまぶしく輝く推しが、自分の生活圏内にいる。緊張で冷や汗が止まらなくなる事態が予測できるが、やはり、実際に近くで尊い推しの顔を拝めるチャンスに遭遇すると、天にも昇る気持ちになり、今日まで生きて来たことに感謝しだす自分がありありと想像できる。

『推しが隣で授業に集中できない!』(筒井テツ:原作、菅原こゆび:漫画/講談社)は、大好きなアイドルと、同じ高校の同じクラスで、おまけに席まで隣になってしまった内気な新入生・咲子の揺れる気持ちが細やかに描かれたマンガである。

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 高校に入学したばかりの真中咲子は、「春の日差しのようにあたたかで爽やかで煌びやか」なアイドルグループ「春色サンシャイン」の千尋の大ファン。千尋は、控えめで大人しい性格だが、曲が始まった途端、まるで別人のように自信に溢れた笑顔と圧巻の歌唱力で、見るものを魅了する。そんな千尋に強く惹かれ、真摯に応援してきた咲子は、入学早々、同じクラス、しかも隣の席に憧れの千尋がいることに衝撃と喜びが隠せない。咲子は千尋にファンであることを明かし、次第に打ち解けていくのだが、その様子を疎ましく思ったある人物が、咲子のSNSに次々と不穏なメッセージを送りはじめ…!?

 本作は、天使のような笑顔と佇まいが印象的な、プロ意識の高いアイドルの千尋に癒されるのと同時に、たとえ同じ「推し」を応援していても、ファンの応援の仕方は実にさまざまなのだな…と感じた作品でもあった。実は咲子のSNSに物騒なメッセージを送っていたのは、同じ学年で違うクラスの磨彩(まあや)という「ガチ恋同担拒否勢」の女子だった。

 磨彩は、SNS上でも千尋に対する愛を暴走させる過激発言をしており、ファンの間でも要注意人物として認識されていた。しかしながら、磨彩は、自分の存在を推しに認知されたい咲子とは真逆で、千尋に存在を気づかれずに応援したいオタクであった。磨彩はどんどん千尋と仲良くなる咲子にこっそり嫉妬して、嫌がらせをしたのだが、結局、「私だって隣にいられれば…!」と、涙を流して咲子に自分の正体を明かしてしまう。その涙を見て「千尋のことを大好きなのは同じだ」と感じた咲子は、3人で仲良く学校生活を送れるよう取り計らうのであった――。

 千尋と大切なクラスメイトのひとりとして仲良くしつつも、授業で隣の人と答案用紙を交換して採点する際、千尋に採点してもらい「ちろちゃんの直筆サイン(?)付き小テスト…!?」とうっかり胸を躍らせる咲子に思わず共感したし、咲子に乗せられ、フルで「春色サンシャイン」の振りを教室で完璧に踊る磨彩の姿も可愛かった。

 千尋は友達だけど憧れのアイドルなのは変わりない。ライブに行くと、普段は近い場所にいるのに、アイドルの千尋とは距離を感じて、切なくて苦しくて…。そんな推しとファンの複雑な関係性や、3人の少女たちの色鮮やかな青春模様が堪能できて、胸がいっぱいになるマンガである。

文=さゆ

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