あなたに「イドコロ」はありますか?『ナリワイをつくる』の著者が語る安心感を保つ場所

暮らし

公開日:2021/5/7

イドコロをつくる
『イドコロをつくる: 乱世で正気を失わないための暮らし方』(伊藤洋志/東京書籍)

“一見無駄に見える各種のイドコロが減り、個人が孤立すると、他者の助けが得られれば難なくクリアできることが、とてつもなく困難になってしまう”

“とてつもない困難”を乗り越える手助けになるような「イドコロ」が、あなたにはあるだろうか。

『イドコロをつくる: 乱世で正気を失わないための暮らし方』(伊藤洋志/東京書籍)では、『ナリワイをつくる』で小さな仕事を複数持つ生き方を提唱したことでも知られる伊藤洋志さんが、生きていくためのイドコロの作り方、見つけ方を指南する。

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 イドコロは、コミュニティとも少し異なるという。コミュニティでは「助け合わなければならない」といった暗黙の掟がある。ただでさえ資本主義社会で「お金がないと困るぞ」と急かされている私たちにとって、助け合うこともまたさらなるプレッシャーとなるかもしれない。イドコロとする場所は、「過剰なプレッシャーを無効化できる時間や場」であることを優先して考える。

 例えば伊藤さんは、自主運営の仕事場「スタジオ4」を作った。散歩していてたまたま見つけた入居者募集の貼り紙を見て、成り行きで法人を作り、近所に住む友人とシェアオフィスにした。小さな組織でも、空間を共有して働くだけで風通しが良くなったそうだ。

「全国床張り協会」は、古い家の床張りを練習するための趣味の集まりだ。“シンプルな目標を達成する時間は充実度が高い”という。

 イドコロは作らなくてもよい。見つけることもできる。公園、緑道、神社など、街には公共空間が広がっている。いつでも行けて、心を平穏に保つことのできるイドコロを探しておこう。

 また、生活圏内の通いやすいお店もイドコロになる。その他にも、「近所の書道教室の門を叩く」「消防団に入る」「縁側をつくる」「読書によいベンチを探す」「手打ちうどんを打つ会を開く」など、イドコロの作り方はさまざまである。本書の冒頭ではイドコロの実践例が写真でも紹介されているので必見だ。

 コロナ禍で不安感が高まっている。誰にでも開かれたSNSの世界は、ときにすさんでしまい、居心地が悪くなることもある。危機の時代にこそ、普段は意識しないようなイドコロが、精神的な安心感を保つためには大切になるだろう。

“不安の感染を防ぎ、思考の健康を保つ”

「乱世」といえる今こそ、自分の「イドコロ」を見直してみてはどうだろうか。

文=遠藤光太

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