組織の問題を解決に導く秘策!当事者意識を高める2 on 2対話法とは?

ビジネス

公開日:2021/5/11

組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2
『組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2』(宇田川元一/ダイヤモンド社)

 悪くはないけど良くもない、なんとなくモヤモヤした気がする職場。大問題があるかと言われると、そうでもない。でも、放置しておくとマズい気がする。そんな「組織の慢性疾患」に効く『組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2』(宇田川元一/ダイヤモンド社)は、会社組織において各々の当事者意識を、どうすれば最大限にできるかの方法が探求されている一冊だ。

慢性疾患に関連した小さな問題は発生しますが、そのときに、自分がその問題にどう関わっているのかが見えているかどうかが大きな分かれ道です。そこが見えていないと、相手のせいか、自分のせいかという問題にすり替わってしまいます。問題は複合的に起きているのであって、誰か一人のせいではないのです。

 経営学者の著者は、全国の人事担当者が投票を行うHRアワードで書籍部門最優秀賞を獲得した『他者と働く―「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)の反響を得て、さらに発展させた組織論を本書で展開している。著者は前著で、「人間一人一人は全く違ったナラティブ(物語)の中にいる」という理由から、ネガティブ要素として捉えられがちな「わかりあえなさ」を当然のことと捉え、対話を軸に共進化を推進していく方法論を紹介した。しかし、対話の機会を設置すること自体や、「シリコンバレー式」としてよく知られている「1 on 1」を会社組織の仕組みに導入するにあたっての障壁が多いというフィードバックが、読者から寄せられたという。そういった経緯から、本書のテーマである「2 on 2」という対話方法が考案されることとなった。

「2 on 2」の簡単な流れを説明しよう。まず課題を抱えるAがいる。その対話相手として、同チーム内のBを招く。Bは問題解決策を言うのではなく、問題の背景を引き出すことに努める。

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 AとBの横では、同チーム内のCとチーム外のDが対話を聞いている。AとBの対話が終わったら、CとDがその所感を話し合う。ここでも、やはり問題解決は目指さず、Aの問題意識に同調する論調で話す。

 AとBは、CとDの対話を聞く。CとDは「反転の問いかけ」を用いると効果的なことがある。たとえば、「モチベーションがあがらない」という課題があったとするならば「モチベーションを下げるのはどのようなことか」という対話をする。そして、普段は聞かないような単語や切り口をAは聞くことになる。

 そして、AとBの対話、CとDの対話をもう一度繰り返した後、最後に話し合われた問題に対して全員で「名付け」を行う。こうすることで、問題の当事者意識が参加者全員に芽生え、AだけではなくB・C・Dにも違った光景をもたらすことが可能になるのだという(ちなみに、対面ではなくオンライン上の対話でもこの方法論は成立するという)。

 つまり、問題は「人」にあるのではなく「問題そのもの」にあるという見方が、2 on 2の軸となっている。やや禅問答のようだが、「問題そのものに対する問題意識を持つ」というスタンスだ。

2 on 2が目指しているのは、問題に対しての理解を深め、背後にある慢性疾患へのセルフケアを確立していくことです。
そのためには、参加メンバーの様々な視点を観察し、問題についての理解を深めていくことが不可欠です。
そのために大事な点は、問題解決策を言わないことです。これは非常に重要です。

 会社組織でなにか問題が生じ、上層部やマネージメントに従事している人物がその解決に当たる。この構図で解決に取り組む人物が最も見逃しやすいのは「自分も問題の一部である」点だという。そう聞いて、ハッとした人はぜひ本書を手にとってみるべきだと思う。なんとなく暗雲が立ち込めている職場の雰囲気を打破するために、本書で紹介されている2 on 2の手法を取り入れるか、あるいは自分なりに応用した手法を導入してみてはいかがだろうか。

文=神保慶政

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