「役立たず!」と荒れ地に追いやられたけど…チート級スキルで街づくり&のんびり領主生活!?

マンガ

公開日:2021/5/9

植物魔法チートでのんびり領主生活始めます
『植物魔法チートでのんびり領主生活始めます』(さんねこ:作画、りょうとかえ:原作、いわさきたかし:キャラクター原案/KADOKAWA)

 勉強が苦手、スポーツが苦手、コミュニケーションが苦手……。年齢を重ね、自分の苦手を自覚すればするほど、「どうせ私なんて」と自信をなくしてしまいがち。特に周囲の人が当たり前にできていることができないと、自分の存在価値すら危うくなってくる。

 しかし、その価値観は本当に正しいのだろうか? 『植物魔法チートでのんびり領主生活始めます』(さんねこ:作画、りょうとかえ:原作、いわさきたかし:キャラクター原案/KADOKAWA)は、生き方や価値観について改めて考えさせられる、恵まれない能力のせいで未開の地へ追いやられた公爵家四男の物語。

 本作の主人公・エルトは、戦闘魔法が優遇される貴族社会で戦闘には不向きな「植物魔法」の適性者として生まれた男の子。役立たずだと幼少期から無視され続け、15歳になると数百年放置されていた荒れ地の領主に任命されてしまう。事実上の厄介払いだ。しかし、エルトはそんな境遇に負けることなく、自分が置かれた状況で今何ができるかを考え動いていく。

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 まず、植物魔法「大樹の家」を使って拠点を確保。それから魔法で「魔力の実」や「治癒の実」を出し、自身の魔力を回復しながらそれらを資金源にするためひたすら生産し続けた。これだけ見ると、そんなチートスキルがあればそもそも恵まれていると感じるかもしれない。しかしライフラインもない、住人すらいない、先の見通しも立っていない状態で、2週間1人でこれを続けたのだ。

 その結果、たまたま通りかかった商会長のナールに治癒の実(=ヒールベリー)を買い取ってもらうことができた。しかもちょうどヒールベリーの不作が続いており、ここで思った以上の収入を得るという幸運に恵まれた。これは、2週間コツコツとヒールベリーを溜めてきたからこそ起こったことだ。

 さらにナールから継続的な取引を持ち掛けられ、エルトの領地内に商会の本拠地を移転させることとなった。こうしてエルトは領民を得ることができたのだった。その後も、薬師ギルドで副ギルド長を務めている薬師のアナリア、英雄と呼ばれているエルフのステラ・セレスター、白バラのドリアードであるテテトカと、次々と力のある領民を増やしていく。

 エルトは、平民である領民に対しても気遣いを忘れず、常に自分にできることは自分でするというスタンスを貫いている。そのうえで適任者がいる場合は相手を信頼して任せるなどバランスをとり、周囲との関係もしっかりと構築していく。

 もしエルトが自暴自棄になったり傲慢に振る舞ったりしていたら、きっと領民が定着することはなかっただろう。これは、現実世界でも同じことではないだろうか。「この人についていきたい」「この人と仕事がしたい」「友達になりたい」と思わせる要素を持っている人は強い。そしてこの素となる種は、実は誰にでもある。それに気付かずにないものねだりを続けるのか、自分が持っている種を育てていくのか……。これが大きな分かれ道なのだろうと改めて感じた。

 ビジネス書や自己啓発本に、よく「他人と比較せず自分の成長と向き合う」といった内容が書かれているが、この『植物魔法チートでのんびり領主生活始めます』は、それを物語で教えてくれるような作品だ。今はまだ自分の持つ能力に気付けていない人も、普段から前向きに物事をとらえていれば、おのずと自身の魅力に気付けるはず。この本は、きっとその手助けをしてくれる。

文=月乃雫

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