韓国ドラマ『ドドソソララソ』は男性ライターの心も震わせる、ピュアでファンタジックな王道ドラマだった!

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更新日:2021/5/15

ドドソソララソ
Netflixオリジナルシリーズ『ドドソソララソ』独占配信中

※この記事はドラマの内容を一部含みます。ご了承の上お読みください。

『Sweet Home -俺と世界の絶望-』とか『シーシュポス:The Myth』とかハードな作品ばかり観ていたのもあって、この作品を観た時には心底ほっとした気持ちになったものだ。うっかりリアルタイムでは見逃していたのだが、改めて観てみて、これはいい作品だ! と思った。コ・アラ(Ara)主演、音楽がつなぐ人々の絆と愛を描くヒューマンドラマ『ドドソソララソ』。印象的な個性を持ったヒロインと、彼女の周囲に集まってくるそれぞれの事情を抱えた人々。そして彼女に惹かれていく純粋なひとりの青年との恋愛模様。ある意味でじつに韓国ドラマらしい韓国ドラマである。タイトル(いうまでもないが、誰もが知っている「きらきら星変奏曲」の旋律である)からしてちょっとメルヘン風味なのでオッサンが観るのはどうかな、と思っていたフシもあったのだが、なんというか、心が洗われるような体験だった。

ドドソソララソ
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 舞台となるのは「ウンポ」という田舎町。結婚式当日に悲劇が起きて天涯孤独の身となってしまった才能豊かなピアニストがこの町に移り住んだところから物語は始まる。持ち前の天真爛漫な明るさで悲しみを乗り越えながら生きていく主人公と、それぞれに事情を抱えた地元の人々との心の交流がときに切なく、ときにユーモアたっぷりに描かれていく。主人公のララがウンポでオープンするピアノ教室の名前が「ララランド」(まあもちろん名前がララだからだが、当然あの大ヒットしたミュージカル映画を下敷きにしているのだろう)という設定のベタっぷりには思わずニヤリとしたが、それだけでなく、そしてストーリーの展開や演出もど真ん中のラブコメ路線。ロマンティックラブコメを得意とする脚本家・オ・ジヨンの面目躍如たる王道っぷりだが、それも許せるというか、むしろドラマの安心材料となっている感じがして好感が持てる。『サイコだけど大丈夫』もまさにそうだったが、日常のすぐそばにあるファンタジーとでもいうような雰囲気で、鬱屈した日常が続くこの時代に、なんとも心地よくフィットするのだ。

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ドドソソララソ
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 コ・アラ演じるララの相手役となるフリーター、ソヌ・ジュンを演じるのが『アルハンブラ宮殿の思い出』で鮮烈なデビューを飾った韓国ドラマ界のホープ、イ・ジェウク。ララとジュン、物語の序盤から抜群のシンクロ率を見せるふたりのコンビネーションが、このドラマの最大の魅力にして胸キュンポイントである。そこに燃え尽き症候群の医師チャ・ウンソク(キム・ジュホン、『サイコだけど大丈夫』の出版社社長イ・サンイン役や『スタートアップ』のダルミの父チャンミョン役でおなじみ)、ジュンに恋心を抱いている女子高校生チン・ハヨン(シン・ウンス)、その母親で美容室を経営するチン・スクギョン(イェ・ジウォン、『賢い医師生活』『のだめカンタービレ』)、ララの妹=愛犬(超絶かわいいポメラニアン)ミミ……といったサブキャラクターが絡んでドラマは展開していく。

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 ジュンをはじめ、個々の登場人物が抱える事情だけを取り出せば結構シリアスというか、暗いドラマになってもおかしくないような設定だったりするのだが、そこを明るく見せていくのがファンタジックな吹き出し演出、テンポよく展開していく作劇、そしてウンポという町ののどかな風景を美しく、柔らかく切り取る映像の力である。そして何より、ドラマをポップに仕立てているのがララというキャラクターの魅力だ。じつは誰よりも悲しい過去を背負い、ドラマ冒頭の交通事故で以前のようにピアノを弾けないことに気づきながらも、常に明るく、行動的に振る舞う彼女の姿が、ドラマを引っ張っていく。どんな時でも人間に寄り添い、人間の心を浮かび上がらせる、その意味ではララはまさに音楽そのもののような人なのだ。もちろん、劇中にはベートーヴェン、サティなどをはじめピアノの名曲も登場。OSTに収録されているオリジナルスコアも含め、ピアノの音色がドラマ全編を軽やかに彩っている。最終回にかけての急展開には賛否両論が巻き起こったが、これも音楽が導いた奇跡……と思えばまんざら悪くないんじゃないか、と思う。ちょっとネタバレになるが、最終回近くのララとジュンによる連弾シーンは感涙必至。ピアノの美しい響きにどっぷり浸りながら楽しんでほしい。

文=小川智宏

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