未読の人は必読、既読の人は書棚に持つべき1冊
公開日:2012/8/15
新版 きけ わだつみのこえ 日本戦没学生の手記
ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android | 発売元 : 岩波書店 |
ジャンル:ビジネス・社会・経済 | 購入元:eBookJapan |
著者名:日本戦没学生記念会 | 価格:928円 |
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今の中高生や大学生には『きけわだつみのこえ』というこのタイトルの字面がどんな風に映るのでしょうか。今の日本が子供たちに戦争の話をどのぐらい義務教育の中で「刷り込んで」いるのかわかりません。が、私の子供の頃は、『はだしのゲン』はみんなが読んでいたし、教科書にも原爆、戦争の物語が必ず出ていたものです。
余談になりますが、スペインでは市民戦争がまだ大きなしこりを国民の中に残していて、義務教育の中では市民戦争には触れられずにいます。国民同士で殺しあってしまった歴史というのは、また悲惨なもので、この国の極端な性格もそのあたりに源を発しているのでは、と思うことがままあります。逆に日本のように、国民全員が負けてしまったという事実は、戦争放棄へ、反省へ、反戦への意識を高めるのに非常に有効だったと思うのです。
戦没学生の手紙を集めたこの1冊を読みながら、涙を流しながら、現在の私たちと変わらない「普通さ」を持つ人たちの命が、「普通に」無駄にされたことの狂気を、戦争と集団の残酷さを噛み締めました。集められた手紙は特攻隊員のものだけではありません。愛国主義者の天皇万歳の人たちだけのものではありません。ある人は母を思い、ある人は妻を思い、ある人は政治を憂い、ある人は国のためと誇り高く、ある人は不条理に頭を抱えたまま、記し、亡くなってゆきました。
子供の頃、戦争の話を読むと「遠い昔」の話のような感覚がしましたが、大人になって読み返すと、実は全然遠い話ではないのだと気が付きます。彼らの生活の上の心配や小さな幸せは私たちのそれと変わりません。それが根こそぎ刈り取られ、「死」へ強制的に送られる凶暴さ。あらためて、戦没者の死の上にある今の平和という状態を考えずにはいられません。
岩波書店のこの電子書籍は、少々字が詰まりすぎで、読みやすいとはいえませんが、それでも、読んだことがない人は必読だし、読んだことがある人も、書棚に持つべき本だと思います。
「母上様」という書き出しだけで、もう涙が出てしまう
過酷な行軍、飢え、疲労、恐怖・・・そんな中で綴られた言葉の重さ
愛する妻への手紙
ある人は詩を遺し
(C)日本戦没学生記念会/岩波書店