少しは人に迷惑をかけてもいい!? 舌がんを経験した起業家が目指すサステイナブルな生き方とは?

暮らし

公開日:2021/6/3

サステイナブル・ライフ アフリカで学んだ自分も社会もすり減らない生き方
『サステイナブル・ライフ アフリカで学んだ自分も社会もすり減らない生き方』(大山知春/クロスメディア・パブリッシング)

「その生き方を、ずっと続けていけますか?」

 ドキッとさせられる文章が帯を飾るのは、『サステイナブル・ライフ アフリカで学んだ自分も社会もすり減らない生き方』(大山知春/クロスメディア・パブリッシング)だ。

 著者の大山知春さんは金融業界で年収1000万円以上の仕事に就き、オランダでMBAを取得。MBA時代に出会ったガーナ出身のビジネス・パートナーと、アフリカ・ガーナの地で起業した。ガーナでは、1年かけて新規事業を準備した。その事業が立ち上げられる直前に発覚したのが、舌がんだった。

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 そんな経験を経た大山さんが、サステイナブルな自分と社会のあり方について記すのが本書である。

「サステイナブル」(持続可能性)と聞くと、SDGsやESG、CSRといった難しい話を想像する人もいるかもしれない。それらは、地球環境や社会、ビジネスを「持続可能」にする文脈で語られることも多いが、実は私たち一人ひとりの暮らしに大きく関わっている。大山さんの定義はシンプルだ。

“社会だけでなく自分にも無理のない、すり減らない生き方を、私は、「サステイナブル・ライフ」と定義します”

「心」や「体」が持続可能であることは、経済成長や物質的な豊かさよりも重要なことかもしれない。大山さんは、がんの治療後、日本を拠点として再び起業した。かつてはバリバリ働き、心身を摩耗させていた大山さんが病気や新たな起業を経て振り返ったのは、ガーナの人たちの暮らしや考え方だった。

“ガーナではみんな、人に迷惑をかけまくって生きています”

 ガーナの人たちは、完璧を求めず、助け合うことを大切にしていると大山さんは感じた。「耐え忍ぶ」ことを美徳とする日本で育つと、人を頼りにして生きようとすることは難しいかもしれない。しかし、大山さんは言う。

“「人に迷惑をかけてはいけない」ではなく、「他者を尊重しよう」という社会になれば、誰もがもっと自由に生きやすくなるのではないでしょうか”

“無理に、天候や気分に逆らって行くより、休んでもいいのではないか。
毎日、雨が降るわけではないし、晴れの日に働けばいいのだから。
ガーナに住んでから、そう思えるようになりました。”

 日々の生活に追われていると、心身がすり減っていってしまう。しかし、本当に大切なものは何なのか、立ち止まって考える時間も持っておきたい。気負いを捨てて、「サステイナブル」な暮らしを考えるとき、本書が手元にあればきっと心強いだろう。

文=遠藤光太

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