聴覚を失いゆくバンドマンの選択は? 現代社会のあらゆる“他人事”を“自分事”にしていく映画『サウンド・オブ・メタル』

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PR更新日:2021/6/16

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サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ
今回取り上げるAmazonオリジナル作品は『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』
Courtesy of Amazon Studios

 コロナ禍という特殊な状況が続き、働き方やライフスタイル、映画ファンの“映画の楽しみ方”も変化してきた。動画配信サービスがますます存在感を増しているが、「自宅で手軽に映画を観られる」Amazon Prime Videoは、数ある定額制動画配信サービスの中でも代表格。しかも〈Amazonプライム会員サービス〉の中に含まれているので、動画だけでなく音楽配信や通販の無料翌日配送など、生活に密着した様々なサービスが付いてくる。そして配信サービスの雄としてオリジナルの映画やドラマに力を入れており、ほかでは見られない名作、話題作がズラリと並んでいるのだ。

 そんなAmazonオリジナル映画から、今回は『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』をおすすめしたい。Amazon Prime Videoで独占配信中の本作は、第93回アカデミー賞で作品、主演男優、助演男優など6部門にノミネート。編集賞と音響賞の2部門を受賞した作品だ。パキスタン系英国人のリズ・アーメッドは、アジア系俳優として初の主演男優賞ノミネートとなった。

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サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ
上裸にタトゥー姿のバンドマン…メタルドラマーの彼が”聴こえなく”なったらどうする?
Courtesy of Amazon Studios

 アーメッド演じる主人公のルーベンが全身タトゥーの上半身裸の姿でドラムを叩いているという、なんともいかついポスタービジュアルに、『サウンド・オブ・メタル』というタイトルに含まれる「メタル」という単語。さらに冒頭から流れる刺激的なメタル音楽と、一見するとこれはハードな音楽映画なのだろうと思えてしまうのだが、決してそうではない。突然聴覚を失ってしまう主人公が、人との関わり合いを通して生きる意味を見出していく物語だ。もちろん“お涙ちょうだい”の闘病映画ともまるで違う。障がいという一つのテーマを通し、現代社会にあるあらゆる“他人事”を“自分事”にしていくための映画なのだ。

サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ
『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』より
Courtesy of Amazon Studios

 恋人のルーとデュオのメタルバンドを組み、ドラマーとして活動していたルーベン。ある朝彼は、いつも通りのモーニングルーティンのなかで聴覚の異常に気が付く。常にこもったような音に包まれ、人との会話さえもうまく聞き取ることができない。専門医の治療を受け、このままでは聴力が完全に失われてしまうことを知らされたルーベンは自暴自棄に陥っていく。それを見かねたルーは、聴覚障がい者のデフコミュニティを運営するジョーの元へとルーベンを連れていく。そして慣れない共同生活のなかでルーベンは、自分が必要とされている実感を取り戻していくのである。

 ルーベンのように大音量の音楽に常に晒されているミュージシャンが、突発性の難聴を患うという話は頻繁に耳にする。もっともそれは音楽関係者に限った話でもなく、私たちがイヤホンを介して大音量で音楽を聴いたり、映画やYouTubeを観たりを繰り返していても起こりうること。

サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ
恋人とデュオを組んでいたルーベンは、ツアーに出る矢先だった
Courtesy of Amazon Studios

 この『サウンド・オブ・メタル』で描かれるできごとは、極めて日常的で、身近なトピックと言える。それまで当たり前にできていたことが突然できなくなった時、人間は誰しも元の状態を取り戻そうとして苦悩し、結局それが叶わないと知った途端に絶望のどん底へと突き落とされてしまうことだろう。それは“聴こえる”ことに限らず、“見える”こと、“動ける”ことでも同じである。

『サウンド・オブ・メタル』でルーベンが過ごすことになる、ジョーが運営するデフコミュニティにこそ、この映画が最も描こうとしている本質が表れている。一刻も早く手術を受けて聴覚を取り戻したいと願うルーベンに対し、ジョーは聴こえないままでもよりよく生きる術があることを伝えていく。また自分が必要とされている実感を求めて率先して動くルーベンに、ジョーは自分自身を見つめ直すために静寂と共にする時間を与えていく。

サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ
『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』より
Courtesy of Amazon Studios

 多くの物語において、主人公が新しい環境に足を踏み入れれば、そこで出会う人々の中で新たな恋を発見したり、理解し合える友人とめぐり会ったり、倒すべき悪と対峙したりということが頻繁に起こりうるが、本作にそうした安易でドラマティックな出来事は訪れない。各々が自分の置かれた環境や自分自身を受け入れ、相互に理解しながら正直に生きていこうとするプロセスが、時間をかけて淡々と過ぎていくばかりである。

 それはメインの登場人物にも言えることであり、ルーベンは自分の願いを叶えることを諦めもせず、ジョーは信念を曲げず、そしてルーは健気にルーベンを支えようとする。最近は「まずは自助」などという言葉を耳にするが、「共助」があってこそ「自助」は成り立ち、おそらくそのさらに手前に「公助」があるから「共助」が存在できているのだと、『サウンド・オブ・メタル』から理解することができよう。

 本作のように聴覚障がいを主たる題材にした作品は、過去にも幾多の名作が生まれてきた歴史がある。ろう者であるマーリー・マトリンが主演を務め、アカデミー賞で作品賞を受賞した『愛は静けさの中に』(81)をはじめ、近年の日本でも京都アニメーションが手掛けた『映画 聲の形』(16)などがその代表的なところだ。しかしそれらの多くは、外側、つまりは健常者側からろう者を見つめ、いかにして共存していくのかを説いてきたわけだが、『サウンド・オブ・メタル』はその正反対のアプローチをとる。ろう者を主人公にし、ある朝突然“聴こえている世界”から“聴こえない世界”に連れていかれる恐怖を観客にいかにして体験してもらうか、という点に、映画としてできるあらゆる表現を駆使して挑んでいるのだ。

サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ
優しく促されるが、ルーベンは手話がわからないままコミュニティに参加する
Courtesy of Amazon Studios

 つい数分前に聴こえている世界で描いたのと同じ動きを、聴こえない世界の中で繰り広げる反復表現で説得力を与えてみたり、自分の叫び声すらも遠くなることで自分の中に存在していたアイデンティティとの乖離を見せる。そしてまた、しんとした静寂のなかで全身の骨を通して伝導される滑り台を叩く音によって、主人公の閉ざされた心の鍵が開けられていく。ストーリーの流れとしてはごく基本的な段階を踏んでいきながらも、それをより効果的に見せる工夫が随所に織り交ぜられており、たしかにこれはアカデミー賞において作品の根幹を担う重要な賞として位置づけられる編集賞を受賞するのも納得できよう。

 そしてもちろん、主人公の聴力を擬似体験させる上でなによりも欠かせないのはサウンドデザインであり、その卓越ぶりたるや、実際に味わってもらうほか形容のしようがない。こちらもまた、アカデミー賞で音響賞に輝いたわけだが、もはやそれに異を唱えるものはいないだろう。おそらくどんなに優れた音響設備を整えた映画館で鑑賞するよりも、家でノイズキャンセリング機能を搭載したイヤホンで鑑賞するのがふさわしいのではないだろうか(くれぐれも音量には注意してほしいが)。厳密に言えばアメリカなど一部地域では劇場公開もされているが、自宅鑑賞が中心となる配信時代に最もネックとなりうる“音の表現”について、この『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』が一つのアンサーを提示したことは言うまでもないだろう。

サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ
『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』より
Courtesy of Amazon Studios

 映画が観るものから体験するものとなって久しいが、これほどまで真摯に映画の表現技法を活かした上で主人公の境遇を擬似体験させる作品があっただろうか。それはまた同時に、自分と異なる境遇に置かれた人物へ想像力を働かせる一助を担うことにもつながっている。ラストに待ち受ける静寂が確かに聴こえたら、これまでより世界が拡がっていることのなによりの証左かもしれない。

文/久保田和馬

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