和山やまの初連載漫画『女の園の星』待望の2巻が発売! その人気の秘密とは?

マンガ

公開日:2021/6/16

女の園の星
『女の園の星』2巻(和山やま/祥伝社)

 漫画家・和山やまさんの絵柄は、一見すると繊細でシリアスである。しかし織りなされる物語はシュールな笑いに満ちている。

 和山やまさんがデビューしてから2年。既に単行本が出るたびに話題になり、大規模な賞を受賞し続けている人気漫画家だ。描く漫画のジャンルはギャグだが、その味わいは独特である。ひとつの文学作品のように、コマとコマのあいだに「間」を感じるのだ。文学作品には行間を読んで想像する楽しみがあるが、和山やまさんはそれをギャグ漫画で実現させている。

『女の園の星』(和山やま/祥伝社)は「このマンガがすごい!2021」オンナ編1位を獲得した和山さんの初連載漫画であり、その魅力があますところなく表現されている。舞台は女子校、メインキャラクターは男性教師の星先生と小林先生、そして生徒たちだ。

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 生徒にとって教師の私生活は現実味がない。だからこそプライベートがかいま見えると、それは有名人のスキャンダルのように興味深いものとなる。

 ただその興味が深まり過ぎると、生徒本人の想像を超えて思わぬところにたどり着く。

 たとえば生徒の一人・古森(こもり)が、卒業アルバムを見て、肩にクワガタを乗せた高校生時代の星先生を見つけるエピソードがある。星先生は真面目な教師だ。古森にそうなった経緯を冷静に説明するが、テンションが上がった古森は、その写真をステッカーにして近所の小学生たちにあげてしまう。

 それがもとで星先生の卒アル写真は「クワガタボーイ」としてSNSでバズり、「幸運を呼ぶステッカー」として都市伝説になる。ちなみにこのステッカーは現実でも受注販売されていた。(※現在は受付終了)

 ある日、いきなり柔軟剤のいい匂いがするようになった教師・中村先生のエピソードも興味深い。最初は「彼女ができたのでは」と生徒たちは噂するが、噂には尾ひれがつき、陽気な小林先生が星先生に伝える。

“星先生 聞きました?
中村先生 最近 80歳のおばあちゃんと夜中の公園でヨガ選手権開催してるんですって”

 柔軟剤のいい匂いが、なぜ高齢者との夜中のヨガ選手権に繋がるのか。

 筆者も中高大と10年間女子校だったので、教師を対象とした噂が事実とかけ離れたものになっていく状態は何度も耳にしたことがある。そんなよくある日常を一歩進ませるだけでシュールギャグにしてしまう手腕は、この作者特有のものではないだろうか。作中で中村先生の謎は解き明かされるのだが、やはり中村先生も星先生や小林先生と同じように「ちょっと変な人」だった。

 先生たちのプライベートの中でも、生徒たちにとって特に気になるのは家族や恋愛に関することだろう。

 1巻は星先生が既婚者で子どもがいることに驚かされた。2巻では小林先生の知られざる事実が明らかになる。

 星先生のクラスの生徒・若尾は若いコンビニ店員に惹かれ、早朝にコンビニに行っては、店員が蒸した肉まん「うどんまん」を袋に入れてくれるひと時を大切にしている。

 ある日、それを聞いた星先生と何も知らない小林先生が、偶然コンビニで若尾に会うのだが、小林先生が店員に向かって「週末うち来るの?」と声をかけ、星先生と若尾は戦慄する。

 直後に小林先生と彼の関係が明らかになるのだが、その前後の間の取り方がやはり絶妙なのだ。

 1巻で笑いを呼んだ漫画家志望で登場人物をすぐ死なせてしまう松岡や、星先生観察日記を執筆している鳥井は、2巻にも登場する。女子校らしい遠慮のない雰囲気も、本作の面白さを際立たせている。

 人気作がどんどんと最終回を迎える昨今、「ずっと終わってほしくないなあ」と新刊が出るたびに思う漫画になりそうだ。

文=若林理央

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