これは友情? それともライバル意識? 『ゴールデンカムイ』『刃牙』『シティハンター』『呪術廻戦』に見る男たちの関係性を考える

マンガ

更新日:2021/6/13

※この記事は各作品の内容を含みます。ご了承の上お読みください。

 おもしろいマンガやアニメを鑑賞していると、しばしば登場人物同士の友情とも恋愛ともいえない絆に遭遇し、胸を打たれることがある。考え方も生き方も異なる人間同士が出会い、思いも寄らない絆が生まれていく過程。そこになぜ、私たちは惹きつけられるのだろう。

 本稿では、大人気少年マンガや青年マンガの登場人物が紡いでくれた絆を振り返りながら、その魅力に迫りたい。

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『ゴールデンカムイ』(野田サトル) 杉元×白石

ゴールデンカムイ
『ゴールデンカムイ』(野田サトル/集英社)

 日露戦争帰還兵とアイヌ民族の少女が、陸軍第七師団や網走監獄を脱走した死刑囚らと金塊争奪戦を繰り広げる冒険活劇ロマン『ゴールデンカムイ』(野田サトル/集英社)。

 個性豊かな男性キャラクターがざくざく登場し、元新選組の土方歳三と永倉新八、第七師団の軍曹・月島とエリート軍人の鯉登少尉、アイヌのウイルクとキロランケ……などなど、さまざまな魅力にあふれたコンビも多い。

 中でも主人公の杉元と、「脱獄王」の異名を持つ元囚人・白石の関係性にはぐっとくる。

 出会った当初は、金塊の分け前目当てに杉元に協力していたに過ぎなかった白石。杉元も、けっして白石を信用してはいなかった。しかし危険な旅を続けていくうち、ある種の信頼にも似た感情が芽生えてくる。

 前半部のクライマックス。網走監獄襲撃シーンで杉元は、もし自分に何かあったらアイヌの少女アシリパの傍にいてくれと白石に頼む。白石はその願いを引き受けて、銃弾に倒れた杉元の代わりにアシリパと共にロシアを目指す旅を続ける。途中で命の危険を感じ、一度は旅から離脱しかけるが、そのとき白石の胸中によぎったのは杉元の言葉「アシリパさんを頼むぞッ」だった。

 結局、白石はアシリパの元へと戻り、その後3人はめでたく再会を果たす。

 最初は互いに、金塊を手に入れるために組んでいたにすぎなかった。しかし、勇気ある少女アシリパを見守ること、金塊争奪戦から彼女を解放すること――そんな共通の目的意識が2人の結びつきを強めていく。

『グラップラー刃牙』シリーズ(板垣恵介) 範馬刃牙×花山薫

グラップラー刃牙
『グラップラー刃牙』(板垣恵介/秋田書店)

 目的意識によって生まれる関係は、ときとして友情以上に強固なものともなる。

 ロングラン格闘技マンガ『グラップラー刃牙』シリーズ(板垣恵介/秋田書店)にも、そんなケースは数多い。

 少年時代、強い相手を求めて武者修行に明け暮れていた刃牙(当時13歳)の前に現れた、喧嘩師・花山薫。この花山、15歳にしてヤクザ一家の組長を務め、ウイスキーと煙草を嗜む男だ。実は彼は刃牙ではなく、その父親である「地上最強の生物」こと勇次郎との闘いを望んでいた。そのためにまず息子の刃牙を倒そうとしたのだが、激闘の末に勝利したのは刃牙だった。しかし感動的なのは、その後日のエピソードだ。

 夫・勇次郎しか目に入らない母の愛を、求めても求めても得られない刃牙。そんな刃牙の前に再び花山が現れて、ワイルド・ターキーを共に酌み交わす(注釈:2人とも未成年ですが……)。

「お袋をね…………抱きしめたら噛みつかれたのさ」と呟く刃牙に、「ウラヤマしいヤロウだな……」と言う花山。彼は自分の母親を癌で亡くしたところだった。

「噛みつかれたくっても…………歯なんかとっくに抜け落ちちまって…………」

 そう語る花山に言葉を失う刃牙。そのまま2人は朝まで呑み、父・勇次郎との闘いに臨む刃牙を、花山は無言の握手で送り出す。

 母の愛を求める息子同士、そして共通の敵・勇次郎を倒すという目的を持つ男同士、刃牙と花山の間に独特の絆が生まれた瞬間だった。

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