【次にくるマンガ大賞 2021特別企画】過去の受賞作を振り返り! 不死&不幸タッグのバトルが熱い!『アンデッドアンラック』

マンガ

更新日:2021/6/21

 ユーザーから「次にくる」と思うマンガを募集し、そこでノミネートされた作品から投票によって大賞を決める”ユーザー参加型”のマンガ大賞「次にくるマンガ大賞」。7回目となる今年のノミネート作品が出そろい、6月18日(金)から投票がスタートする。ぜひ参加して推しの作品を応援しよう! ドキドキの結果発表を待つ間に、過去の受賞作品を振り返ってみてはいかがだろう。本記事では2020年にコミックス部門で第1位を獲得した『アンデッドアンラック』(戸塚慶文/集英社)を紹介!

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 不死の身体を持つ者――いわゆる“アンデッド”。エンタメの世界ではたびたび描かれる存在だが、彼らの苦悩にスポットライトを当てた作品はそう多くはない。

 そんななか、本作は異色な設定を巧みに活かした内容だった。

 主人公は超絶な不運な女子・風子。彼女は自身の身体に触れた者に不幸を呼び、その者に死をもたらす体質の持ち主。まだ8歳の頃、両親を含め270人の命を間接的に奪った経験もある。存在しているだけで周囲の人間に不幸をもたらす。風子の心境を思うと、とてもじゃないがつらくなる。

 だからこそ、彼女は自殺を選ぼうとするのも納得した。いや、決してどんな人にも自死を選んでほしくはないけれど、それだけ風子の苦しみは大きいのだ。

 ところが、そんな風子の前にひとりの男が現れる。なんと彼は絶対に死ねない身体を持つアンデッド。ゆえに誰よりも死ぬことを切望しているのだ。

 周囲の人を死に追いやってしまう苦しみと、絶対に死ぬことが許されない身体を持った苦しみ。一体どちらの方が苦しいのだろう。両極端な悩みを抱くふたりは、なりゆきで行動をともにすることになる。正体不明のアンデッドに風子は“アンディ”と名前をつけ、旅に出るのだ。

 やがてふたりは、ある組織と対面する。その名も「対未確認現象統制組織“ユニオン”」。彼らは風子とアンディを執拗に狙うのだが、それには理由があって……。

 そこから風子とアンディは世界の謎と対峙していくことになる。もちろん、そこには衝突が免れない。ふたりは否が応でも戦火に巻き込まれていくのだ。

 本作を読んでいて胸アツなのが、この風子とアンディがお互いに欠かせない存在だという点。不幸と不死がタッグを組むことによって、ときに想像以上の爆発力を生み、攻略不能と思われる敵をもなぎ倒してしまうのだ。その姿はまさに異色のバディ。

 また、本作は絵柄も良い! 『週刊少年ジャンプ』連載作品らしい軽快さとはっきりした線であり、それぞれのキャラクターの表情がコロコロ変わっていく。不幸や不死というモチーフを扱っていながら、必要以上に重々しさを感じさせず、カラッとした読後感に仕上げているのだ。

 一風変わった設定を活かしたバトルものは読んだ誰もが興奮するはず。少年漫画ならではの熱い展開を求めているならば、本作は間違いなく期待以上のものを届けてくれるだろう!

文=五十嵐 大