「ひとりになりたい」と心のなかで泣いている自分に声をかけてあげよう――BTSメンバーも愛読中のベストセラーエッセイ

文芸・カルチャー

更新日:2021/6/18

わたしの心が傷つかないように
『わたしの心が傷つかないように』(ソルレダ:作・絵、李聖和:訳/日本実業出版社)

 毎日淡々と過ごしているつもりでも、幸せを感じる朝もあれば、心に傷を負った夜もある。そうして増えていった小さな心の傷から目をそらしていると、いつの間にか立ち上がれなくなっていた……という人もいるかもしれません。

 先日、日本語版が発売された『わたしの心が傷つかないように』(ソルレダ:作・絵、李聖和:訳/日本実業出版社)は、生きることに疲れてしまった人に寄り添うエッセイ集。韓国で活躍する作家兼イラストレーターのソルレダさんが、自身の言葉とウサギのキャラクター・ソルトのイラストで想いを紡いだ1冊です。大人気K-POPアイドル・BTSのメンバーも愛読している、とファンの間で話題だとか。

わたしの心が傷つかないように p.28-29

 目次には「もっといい自分になるまで」「心の声に耳を傾ける」など、自分と向き合うテーマのほかに「コンコンコン、扉をノックする音」「頭の上の雲みたいな存在」というページを開かなければどんな内容かわからない、ワクワクするページもたくさんあります。

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「自分をいたわる」というページには、小さなしくじりから自分を叱って追い詰めてしまい、最終的に“ひとりになりたい”と思ってしまった人に向けた言葉が綴られています。

わたしの心が傷つかないように p.122-123

ひとりになりたいと思うくらい疲れているなら、真っ先に自分自身に会いに行こう。心のなかに閉じ込められて泣いている自分に、声をかけてあげよう。もし、心のなかの自分が寒さに震えているなら分厚い布団をかけてあげ、わめいたり不満を言っているなら最後まで話を聞いてあげればいい。心のなかで孤軍奮闘している自分に会い、かいがいしく世話を焼いてあげよう。自責、決心、誓いは、それからでも遅くない。

 自分を責めるのは簡単ですが、その前に心の声に耳を傾けてしっかり抱きしめてあげる。一見簡単そうに思えても、実践できている人は少ないかもしれません。忙しい日々を送っている人ほど、ソルレダさんの言葉が心の奥に沁みわたるはず。

 各エッセイはすべて独立しているので“気になる見出しのエッセイを毎日1つ読む”なんて楽しみ方もできそうです。

 そして、やさしい言葉に添えられたウサギのソルトのイラストも同書の見どころ。ソルレダさんは、イラストについて「この世のどんな文章をもってしても、自分の心を表現できないときがある。そんなとき、絵は新しい言葉にとってかわる」と語っています。

 挿絵のなかのソルトは、傷ついて血を流したり、鏡の中で泣く自分自身を抱きしめたり……満身創痍になりながらソルレダさんの言葉の行間を埋めてくれているように感じます。そして、ソルトと自分を重ね合わせる瞬間が何度も読者に訪れるはず。

わたしの心が傷つかないように p.24-25

 夜、ベッドの中で『わたしの心が傷つかないように』を読めば、自分にやさしい気持ちを抱いたまま安らかな眠りにつけるかもしれません。

文=とみたまゆり

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