新型コロナの時代、自らを酷使して働く女性たちの生き抜く術は?

社会

公開日:2021/7/1

東京女子サバイバル・ライフ 大不況を生き延びる女たち
『東京女子サバイバル・ライフ 大不況を生き延びる女たち』(酒井あゆみ/コスミック出版)

“宿命は変えられないが、運命は変えられる。”

『東京女子サバイバル・ライフ 大不況を生き延びる女たち』(酒井あゆみ/コスミック出版)の著者・酒井あゆみさんの言葉には重みがある。なぜなら、酒井さん自身が性風俗産業に携わっていた経験がある。ベストセラーとなり、後に漫画化もされたノンフィクション『セックスエリート 年収1億円、伝説の風俗嬢をさがして』(幻冬舎)や『セックスで生きていく女たち』(アドレナライズ)などで、性風俗を生業とする女性たちの生の声を伝えてきた。彼女の力強い言葉はリスクを負いながらも懸命に働く女性たちに、向けられているのだ。

 本書によると、今、新型コロナの蔓延で性風俗店は危機に瀕しているという。それにも拘らず、いわゆる「直引き」(店を通さず、客からお金をもらうこと)は大盛況が続いていると著者は述べる。それに伴い、直引きでサービスを受けようとする客の要望は、より高いものとなった。

 これは性風俗産業の価格破壊に繋がると著者は指摘する。

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 これまでの酒井さんの著作からもわかるとおり、彼女はたくさんの女性たちに会い、取材を重ねてきた。酒井さんは本書の前半では彼女たちに対し、生きづらさを軽減させるために顧客を得る術を伝授する。そして後半ではこう綴る。

“私は、ほとんどの売る女にとっては、
「太く短く稼いで、売る仕事を辞める」
この考え方が自分を大切にすること、生き延びることにつながると思っている。“

“売る業界は、(中略)どうにも生き難い女のための駆け込み寺であってほしい。生活の豊かさをさらに追い求めようとする女は、この業界にこないでほしいのだ。”

 性風俗店では、新型コロナのクラスターは起きていないという。ふだんから衛生・健康管理のため、毎月、性風俗店が、所属する女性たちに病院での性病検査を義務付けているのもその理由として大きいだろう。

 著者は女性たちのリスクをもっと減らすため、処方箋なしで緊急避妊薬を購入できるようになることを望んでいるが、まだ日本では認められていない。

 性風俗に携わる業務はハイリスクだが、貧困に陥った女性たちにとって、なくなると困ることも多々あると著者は述べる。ただ、軽い気持ちで入る世界ではないということも、説得力をもって綴られ、性風俗産業に携わる女性たちには自分なりの生き延びる術を会得してほしいと、さまざまな例を出して説明している。

 女性の貧困から発生する社会問題について知るための一助として、この書籍は重要な役割を果たしていると言えるだろう。

 全編を通して、著者の貧困で苦しむ女性を一人でも減らしたいという願いが伝わってくる。

文=若林理央

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