陰山流子育ての最終結論は「子どもの幸せを一番に考えるのをやめること」

出産・子育て

公開日:2021/6/28

子どもの幸せを一番に考えるのをやめなさい
『子どもの幸せを一番に考えるのをやめなさい(SB新書)』(陰山英男/SBクリエイティブ)

 日本人は世界から見ると尽くしすぎるほど尽くす、といわれる。会社に尽くす、地域に尽くす、親に尽くす、そして親は子どもに尽くす。親は自分の生活が犠牲になっても、子どもの幸せのために注力する。

 陰山英男氏といえば、教育界の有名人だ。教育を専門としない人でも、氏が広めた「百ます計算」や「早寝・早起き・朝ごはん」というフレーズを一度は聞いたことがあるだろう。そんな氏が、「陰山流子育ての最終結論」として『子どもの幸せを一番に考えるのをやめなさい(SB新書)』(陰山英男/SBクリエイティブ)を上梓した。この本で、氏は繰り返し「親がまず幸せになること」の大切さを説いている。

「子どものためにこそ、自分にこだわり、成功し、幸せのモデルを示すこと」で、子どもを幸せにできる、と本書で陰山氏は述べる。親が幸せや幸せになる方法を知らないのに、幸せになる方法を子どもに教えられるはずもないし、親が「幸せの手本やロールモデル」になることで子どもはしぜんとその姿から学ぶ、というのだ。読書をする子どもの親は読書をする姿をわが子に見せているし、学ぶ楽しさを知っている親の子どもは自ら学ぶ。

advertisement

 さて、本書は、子どもを幸せにするために親が実践すべき13カ条で構成されている。

 そのうちのひとつは、前述の「子どもの幸せを一番に考えない」こと(本書の「第2カ条」)。親が自身のことを一番に考えるメリットや効果が語られている。

 本書にはこれ以降で、親が取り組むべき具体例が示されている。例えば、第5カ条「読め、メモれ、筋トレせよ」では、脳トレだけでなく健康寿命も伸ばしてくれる読書の取り組み方や、メモの取り方、そして筋トレの仕方が書かれている。教育者が筋トレの推奨とは意外に思われるかもしれないが、考えてみれば、百ます計算も筋トレも脳と体の違いはあれど「鍛える」という意味では同じ取り組みだ。百ます計算が子どものうちからプロの指導によって効果が上がるのと同じで、筋トレも若いうちからプロの指導のもとで行うのが良いそうだ。著者はパーソナルトレーナーの指導を受けて、わずか3カ月で筋肉質の体になり、充実感、達成感が溢れる日々を過ごしているという。

 第10カ条「貴重なのはお金ではない、時間だ」では、時間の大切さを説いている。限られた時間の使い方が人生を分けるポイントだという。時間を有効に使うためには、ひとつに「自分の行動を時間給で換算するクセを付ける」方法があるそうだ。

 例えば、自分の時給を仮に安く1000円と価値付けてみるとする。このとき、片道1時間(往復2時間)かかる距離の店でバーゲンセールをやっていて普段より1000円お得に買い物ができるとしても、時給換算では1000円のマイナスとなる。この場合、セールに行かないという判断が合理的であり、自分の価値に見合う他の活動に時間を費やすべきだ。資産は人それぞれだが、所持時間は誰も等しい。限られた時間を有効利用することで、親は幸せを引き寄せられる。それを見て、子どもも時間を有効に活用しようと思うはずだ。

 本書は、人が幸せになるには、妄想をもつ必要がある、と述べる。妄想の本名は「夢」。親が夢に向かって進む姿が、子どもの幸せをも実現しそうだ。

文=ルートつつみ(@root223

あわせて読みたい