童顔アラサー女優が魔法少女に変身!? パートナーは彼女の大ファンというイケメンゴースト!

マンガ

更新日:2021/7/6

GHOST GIRL ゴーストガール
『GHOST GIRL ゴーストガール』(紗池晃久/集英社)

 有名になって世界を見返す! 『GHOST GIRL ゴーストガール』(紗池晃久/集英社)は売れない女優のクロエ・ラヴが主人公。28歳になったクロエは類稀な童顔と霊媒体質の持ち主だった。彼女は、退魔請負人(ゴーストリーパー)で自分のファンだというカイと出会う。このときから、がけっぷちのアラサー女優が変身して悪霊、邪神と戦う物語が始まる。

 アニメ化もされたヒット作『ロザリオとバンパイア』(池田晃久名義)の紗池晃久氏が圧倒的な画力で読ませる最新作だ。

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世界を見返せるのか? アラサー女優が魔法少女に変身!

 クロエは、20歳以下に見えるロリータフェイスとスタイルを持っている。もちろんそのルックスでサバを読む、セクハラへ過剰な反撃をしてしまうなどのトラブルも起こしていた。そのためか通行人や死体などの仕事ばかりの、ぱっとしない女優だった。だが彼女の人生があるとき一変する。

 黄泉の国から脱獄した悪霊と、それを追ってきたゴーストリーパーのカイ・イォドという美青年が現れたのだ。カイは霊体(ゴースト)で、クロエの大ファンだと言い、さらに「君の中にぼくを入れてくれないか」と頼んできた。霊体は現世では肉体を必要とするからだ。

 クロエは霊媒体質なうえ、どんな魂の力も引き出すほどの「器」だという。そのために霊が彼女の体を狙って集まってくる。クロエに襲いかかる悪霊! 覚悟を決めた彼女は、「初めて会った自分のファン」の彼なら……と体を貸すことを許した。

 彼女はカイが憑依して変身する。露出の多い“魔法少女”のようなその姿は、彼女が唯一主演した、水着で鎌を振り回して戦う作品「ゴーストガール」の衣装を意識したという。カイはクロエのルックスが大好きな(ちょっと)変態なイケメンだったのだ。変身はしたものの肝心の戦闘力は……? 一瞬の心配も杞憂に終わる。

悪霊だか何だか知んないけど―
くぐった修羅場の数なら負けるかっつぅの―

 彼女はもともとスラムの出身で、生きるために血と泥にまみれてなんでもやってきた。「いつかキラキラと輝くような人生を送る」。そのために女優になったのだ。前述の通り過剰防衛でトラブルを起こすほど、もともとクロエは強い。スルー・ザ・ブラッドという霊技(スキル)を発現させ、鎌を一閃し悪霊を斃す。カイは言う。

ぼくが羽ばたかせてあげるよ
世界中に君の名が轟くように

猫の使い魔、マッドサイエンティスト、美しき殺戮人形が仲間に

 カイの言う通り、クロエは悪霊を引き寄せる。猫の霊であるノエル・ウルタールもそうだった。だがクロエが、魂魄を食べて自分の力にできるスキルを持っていた魂奪者(プレデター)という悪霊を斃し、ノエルを解放する。救われたノエルはクロエの使い魔になり、カイと同様、彼女を憑依させる。高速移動と爪が武器の、猫耳ゴーストガールだ。

 報酬がもらえる正式なゴーストリーパーになるため、クロエはカイも所属する「アーカムバレット」極東支局へ向かう。そこには死体を蘇らせる科学者ドクター・ウェストや彼の使い魔の美少女で、ゴーストリーパー最強の一角“殺戮人形”ショゴスがいた。

 クロエは後に彼らと共闘することに。そもそも悪霊が現世に出てきたのは、黄泉の国から大量に脱走したからなのだが、果たしてその理由とは? ドクター・ウェストは、糸を引いているのは「旧支配者」(グレート・オールド・ワン)だと言う。

 なお「アーカムバレット」の局長・ニャルラトホテプは、前例すらないほどの霊媒体質であるクロエを“逸材”であり“エサ”だと見て笑みを浮かべる。謎多き物語は、いずれにせよクロエを中心に進んでいくのだ。

敵はクトゥルーの邪神たち? 王道ゴーストバトル開戦!

『GHOST GIRL ゴーストガール』には「クトゥルー神話」(クトゥルフとも表記される)を基にしたと思われる名称が多く登場する。「クトゥルー」とはハワード=フィリップス=ラヴクラフトによるホラー小説を基とし、オーガスト・ダーレスらが設定を集めて体系化したもの。多くのSF、ホラー、ファンタジージャンルの小説やコミックのモチーフになっている。

「旧支配者」(グレート・オールド・ワン)は、クトゥルーの世界で人類史以前に地球を支配していたとされている存在だし、ニャルラトホテプ、イォドはクトゥルーのキャラクターである。力や役割はそのままなのか気になるところだ。

 組織名であるアーカムもクトゥルー小説「アーカム計画」から。そもそもクロエのラヴという名も作者からとったのでは? と思わせる。そしていよいよ姿をみせた、強力な邪神の名はオスカー・クトゥルーという。

 紗池氏はTwitterでクトゥルーを愛読していることを表明しており、「クトゥルーシェアワールドの一角に仲間入りした」とも発言している。

『ゴーストガール』もクトゥルーにつらなる物語だとすれば、より恐ろしい邪神たちとの戦いが待ち受けている可能性が高い。なしくずし的に戦うことになった“ビールが飲める28歳の魔法少女”は、世界を見返すことができるのだろうか? 主人公がアラサー女優という珍しい王道バトルファンタジーに注目してほしい。

文=古林恭

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