pixivコミック ゆるーいBL部門第1位! イケメン高校生×アラサーコインランドリー管理人のゆるキュンな日々を描く『みなと商事コインランドリー』

マンガ

更新日:2021/7/2

みなと商事コインランドリー 1
『みなと商事コインランドリー 1』(缶爪さわ:漫画、椿ゆず:原作/KADOKAWA)

 絶対に私だけではないと思うが、ときどき、どうしようもなく「物語がありそうな場所」というのを発見して、ちょっと興奮してしまう。たとえば、海の見える坂道、雨の日のバス停、誰もいない放課後の教室。『みなと商事コインランドリー 1』(缶爪さわ:漫画、椿ゆず:原作/KADOKAWA)は、まさにそんな場所のひとつ、ちょっとさびれたコインランドリーを舞台にはじまる物語だ。

 湊晃(みなとあきら)は、コインランドリーの管理人業に就いているアラサー男子。以前はやりがいのある職場に勤めていたが、サービス残業のしすぎで体を壊し、隠居した祖父のコインランドリーを継いだのだ。創業30年のコインランドリーはエアコンもないほど古びているけれど、地元の人々に愛されていて、やってくる客もほとんどがご近所さん、おもにご老人である。そんな穏やかなコインランドリーに、ある日、珍しい客がやってきた。男子高校生だ。

 乾燥機が動かないと言う彼──長身にしっかりとした肉体、涼やかな顔立ちの男子高校生を見て、晃の胸はかすかに騒いだ。いいなぁ、タイプだな。実は晃はゲイなのだ。しかし相手は未成年、いやらしい目で見ることは許されない。動かないという乾燥機は、電源が入っていないだけだった。晃は、高校生を一瞬でもいやらしい目で見てしまったという罪悪感から、冷房のないコインランドリーで乾燥機を回す彼に、「熱中症に気をつけろよ」と冷たいジュースをおごってやる。すると、コインランドリーを再訪した彼は、ジュースの礼だと手作りのクッキーを差し出したのだ。

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 それ以来、晃は、コインランドリーを訪れる彼、香月慎太郎(かつきしんたろう)と話をするようになった。兄弟と祖父母あわせて10名になる大家族の長男として生まれた慎太郎は、このコインランドリーに来ると、ひとりの時間を持ててほっとすると言う。けれど、それ以上に晃としゃべるのが楽しいと言う彼を、放っておけるはずがない。

 時間をともにすることで、さまざまな発見もあった。同じスポーツの経験があること、微笑む表情が可愛いこと、晃を気にかけていてくれること。歳の差に関係なく打ち解けていくふたりだが、あるとき、ふとした会話の拍子に、晃は慎太郎の前で、自身がゲイであることを話題にしてしまう。その途端、逃げるように帰って行った慎太郎の態度に、引かれたのだと思い込む晃だったが……。

 真夏の空、住宅街の古びたコインランドリー、蝉の声という最高のシチュエーションからはじまる本作中では、ゆっくりと時間が流れる。レトロなコインランドリーにはエアコンが入り、目眩がするほど暑い夏休みも気がつけば終わり、可愛いばかりだった少年は、欲を知る男の顔になる。読了後は、自分の周囲でも少しずつ変わってゆく時代、季節、人の気持ちに、いまいちど目を向けてみたくなる。

 これまでに「WEBマンガ総選挙2020」第10位、「ちるちるBLアワード2021 BEST表紙デザイン部門」第2位、「pixivコミックランキング」ゆるーいBL部門第1位&総合部門第3位と、多数入賞を果たし注目されている本作。この夏は、日ごとに変わる季節を愛おしむように、友愛が恋へと変わる過程をじっくり味わってみては?

文=三田ゆき

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