「しつこいヤツ」のイメージが変わる。人生がうまくいく「しつこさ」を身につける方法

ビジネス

公開日:2021/7/7

結局、「しつこい人」がすべてを手に入れる
『結局、「しつこい人」がすべてを手に入れる』(伊庭正康/アスコム)

「あいつはしつこい」という言葉は実際のところ、ちょっとした悪口として使われることが多い。しつこいという言葉を辞書で引いても、煩わしい、くどいといったネガティブな言葉が目に飛び込んでくる。『結局、「しつこい人」がすべてを手に入れる』(伊庭正康/アスコム)は、そんなしつこさのイメージに反して、仕事や人生を成功させる「良いしつこさ」を習得する方法を伝えている。嫌われ者のしつこさにスポットを当てたのは、「それって本当?」という疑いも含んだ期待感を読者に抱かせるという点で、もはや画期的だ。

 著者は、リクルートグループでトップセールス、トップマネージャーとして累計40回以上表彰されるなど営業として活躍し、現在は研修会社の代表として営業力やリーダーシップについて講義する伊庭正康氏。本書で著者は、世界で成功している経営者や多くのフォロワーを集めるユーチューバーなど、大きな成果を出す人は全員、しつこい人だと言う。しつこさとはつまり、コツコツと地道にやり抜くこと。ただ、成功するまで失敗も重ねながら、とことんやり続ける彼らの姿からは、「やり抜く」より粘着質な「しつこさ」こそが、彼らを特別にしている要素だということが伝わってくる。

 本書ではまず、成功者がしつこさについて語る言葉や、人見知りながらも営業として成果を挙げた著者の経験、また心理学のデータも用いながら、しつこさの重要さを解説。IQや才能よりも粘り強さが成功を左右するというデータや、偉業を成し遂げた歴史上の人物には「動機の持続性」、つまりしつこさがあったという調査結果も引用している。特別な才能や頭の良さがなくても、しつこさを突き詰めることで、夢や成功に近づけるのだと著者は言う。

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 さらに、チェックリストで読者がどういうタイプの「しつこくできない人」かを診断。仕事で成果が上がらない、ダイエットなど決めたことが続けられないという人が、習慣になるまでのどの段階で断念しているのかがわかる。著者はその時期や原因別に、しつこくなれる方法を伝授する。たとえば、習慣化の開始時期で離脱してしまう「三日坊主型」には、やるべきことを楽しむコツ、そして面倒そうに見えることを簡単にするコツが必要だ。伸び悩んだ時期にやめてしまう「スランプ型」は、人に頼りながら続けることや、人を真似したり、人からしつこさを伝染してもらったりすることで状況が打開できるという。

 著者が強調するのは、根気がなくてもしつこさは手に入れられる、ということ。そういう性格ではないからとしつこさに距離を感じる人でも、しつこさは習慣化できるとわかれば実践したくなるのではないだろうか。また、相手がある仕事や、人間関係の悩みに直面している人にとって気になるのは、しつこすぎて嫌われてしまうパターンだ。本書は、そんな読者の不安にも対処している。自分本位の発想が招くしつこさや、相手のパーソナリティを無視したしつこさなど、悪いしつこさをも解説しているのだ。心理学者のデビッド・メリル氏が提唱した「ソーシャルスタイル理論」に基づいた、4つのタイプ別に紹介されるNG言動も興味深い。相手がどのタイプに近いかイメージすることで地雷を踏むことを避けられるので、しつこさを警戒する人はチェックしてみてほしい。

 成功者たちの習慣を参考にしているとはいえ、本書は、「大きな成功を収めたい人のために書かれた本」ではない。しつこさは、仕事だけでなく、趣味などの自分のやりたいことを形にしたり、なりたい自分に近づいたりするために必要な、シンプルなスキルだ。そういえば周りを見渡してみると、しつこいけれど嫌われていない人は、仕事も私生活も楽しそうだ。しつこくて嫌われている人も、持ち前のしつこさをポジティブに変換できるのなら、なんだか羨ましい。しつこさのイメージがガラッと変わり、しつこさを追求してみたくなる1冊だ。

文=川辺美希

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