強く言われるとつい「いいよ」と言ってしまう…自己犠牲タイプになるのは「脳」のせい!? 自分の気持ちを大切にする感情脳の鍛え方

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公開日:2021/7/11

「優しすぎて損ばかり」がなくなる感情脳の鍛え方
『「優しすぎて損ばかり」がなくなる感情脳の鍛え方』(加藤俊徳/すばる舎)

 私は、誰のために生きているんだろうか。いつも周りを気にし、自分の気持ちを押し殺していると、そんな悲しい疑問が芽生えてくる。自分よりも誰かの気持ちを尊重してしまう性格を変えたい…。そうは思っても性格は簡単には変えられず、変われない自分により嫌気がさしてしまう。

 だが、その悪循環は脳を鍛えることで解決できるかもしれない。『「優しすぎて損ばかり」がなくなる感情脳の鍛え方』(すばる舎)は、脳内科医であり医学博士でもある加藤俊徳氏が手掛けた、まったく新しい自己改革本。

 これまでに1万人以上の脳を診てきた加藤氏は感情脳を鍛えることで、脱・優しすぎて損する人を目指そうとアドバイス。普段の生活に取り入れられる脳トレを伝授する。

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自分の気持ちが上手く出せないのは「脳」のせいだった!

 他人から強く言われると、「それでいいよ」と言ってしまう。いつも、なんとなく自信がなく、未知のことは怖く感じる。日常の中で、そんな生きづらさを抱えている方は、どれくらいいるのだろうか。

 加藤氏いわく、それは自分の気持ちが分からないことの裏返しなのだそう。かねてから、加藤氏は脳を機能ごとに区分し、それぞれの場所を「脳番地」と呼んでいるのだが、自分の気持ちが分からない人は「感情系脳番地」の働きが低下していると指摘する。

 右脳の感情系脳番地には外部からの刺激を受けて、「他者の感情を認識する役割」がある。だから私たちはジェスチャーや声、表情などから相手の感情を察することができるのだ。

 対して、左脳の感情系脳番地の役割は「自分の気持ち(自己感情)」を生成すること。「自分は何が好き・嫌い」という自己感情を生み出すだけでなく、前頭葉と連携して気持ちを具体的に言語化していくため、「私は○○したい」というような言動に繋がりやすいのだそう。

 大多数の人は左脳感情(自分の気持ち)より右脳感情(周りへの感度)が発達しているものの、その落差の大きさはノーマルレンジ(正常域)の幅に収まっている。ところが、発達の落差が大きくて、どちらか片方やあるいは両方がノーマルレンジからはみ出ていたり、落差が少なくても両方がノーマルレンジを下回っていたりすると、自分の気持ちをしっかり捕まえて言語化することが難しくなり、過度なストレス状態に陥ることも…。

 こうした人たちは共感力が高いため、とても優しいと思われていることも多いが、その優しさは自分の感情を出せないことに起因しているため、本人は苦しい思いをしてしまうのだ。

自分の気持ちを押し殺してしまう自己犠牲タイプがすべきトレーニングは?

 そこで本書では、優しすぎる人が損をしないための左脳の感情系脳番地の鍛え方を多数紹介。加藤流の斬新なトレーニングは、目からウロコだ。

 例えば、相手が気持ちを態度に出せば出すほど自分の感情を押し殺してしまう自己犠牲タイプの方にチャレンジしてほしいのが、「語彙と気持ちの組み合わせ」のストックをたくさん持つこと。

 このタイプは相手の気持ちに気を取られ、自分の感情を感じにくくなっているのが特徴。いわば、脳の中で自分の感情より相手の気持ちのほうが圧倒的に多くを占めているイメージだ。すると、自分の感情とは関係なく、相手の気持ちに同調・共感したり、他者の感情を自分の感情だと勘違いしたりしやすくなるのだそう。

 だからこそ、周りの人が「気持ちを込めて使っていた言葉」をメモし、同じようなシチュエーションの時に自分も使えるか考えてみることが大切。こうすることにより、自分の気持ちを自覚して伝えやすくなり、他者から気持ちをぶつけられても距離を取って対応しやすくなるのだ。中でも、相手の願望を裏切る気持ちや相手への負の感情は伝えづらいため、ストックは重要だ。

 本書には他にも、同調グセをやめるコツや主体性を取り戻すための生活習慣など、各々の悩みに対してピンポイントで刺さるアドバイスが満載。優しいだけの自分は、もうやめようという決意を胸に秘めている方は、ぜひ感情を言語化するトレーニングを日常の中に組み込んで、脳内にある自分の気持ちを大切にできる私になっていこう。

文=古川諭香

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