カブトムシを飼う前に読んでおきたい!! 卵から成虫になるまでの生態を、子供にもわかりやすく解説

出産・子育て

公開日:2021/7/7

カブトムシの音がきこえる 土の中の11か月
『カブトムシの音がきこえる 土の中の11か月』(小島渉:文、廣野研一:絵/福音館書店)

 読者の皆さんは、カブトムシを飼育した経験があるだろうか。小生も小学生の頃より、幾度となく幼虫から飼い始め成虫へと羽化させることを目指して挑んできた。しかし、結局それを達成できたのは大人になってからである。子供の頃は、何度もケースの幼虫を掘り返しストレスを与えたり、そのくせ腐葉土の取り換えはロクにせず、それらが要因でうまく育て上げたことがなかったのだ。

『カブトムシの音がきこえる 土の中の11か月』(小島渉:文、廣野研一:絵/福音館書店)はカブトムシの一生をわかりやすく学べる一冊だ。読者の中には、カブトムシの姿といえば角の生えた硬い体を思い浮かべる人も多いのでは。だが、その姿を見せるのは1年の生涯でも最後の1か月ほどで、それまでの11か月は土の中だという。本書はその時の姿、幼虫から蛹にかけての生活にスポットを当てている。

 カブトムシの産卵時期は7月の末。畑や大きな公園の片隅に積み上げられた「腐葉土」が産卵場所にして、同時に孵った幼虫のエサになり、生活の場ともなる。そこで2晩かけて少しずつ場所を変えながら、休み休み5つほど産卵するのだが、それで終わりではなく、1か月ほどかけていくつかの腐葉土を探し産卵を続け一生を終える。はかない命に哀愁も感じるが、カブトムシはカブトムシなりに生を謳歌しているのだ。そして命は繋がれていく。

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葉っぱ(腐葉土)に栄養はあるのか? 成長には糖分も必要

 ところで幼虫たちは、なぜ腐葉土を食べるのだろうか。確かに植物は栄養豊富な肥料だが、要はしなびた葉っぱじゃないのか。以前はその葉の「繊維」が栄養源だと考えられていたが、最近の研究によると腐葉土に棲む大量の「微生物」も一緒に食べていることがわかった。微生物も生物だけにその体は「たんぱく質」で出来ており、幼虫の成長に欠かせない栄養素だ。食べる腐葉土のうち10分の1程度が微生物、つまりたんぱく質だろうと考えられている。

 もう一つ幼虫の成長に欠かせない栄養が「糖分」だ。これは腐葉土に生えるキノコやカビから伸びる「菌糸」を一緒に食べることで摂取できるのだという。キノコやカビは木や葉の繊維を分解し体内に糖分として取り込んでいるので、それを食べれば良い。更に幼虫は体内にキノコやカビが作る糖分を消化吸収しやすく分解する「腸内細菌」を持っていることもわかってきた。たんぱく質と糖分こそが、小さな卵から大きな幼虫へと、3か月ほどで成長させるのだ。

土の中で過ごす11か月間こそが、カブトムシの本当の姿なのかもしれない

 腐葉土を掘り返すと幼虫が次々と見つかり、まるで群れを成しているようにも見える。確かに、産卵時には近くにまとまっているのだが、成長につれて広く分散してしまっても不思議ではない。なれど別に群れを成す習性ではないのだ。腐葉土の中の生物たちが活動すると二酸化炭素が発生するので、それを感じ取り濃度の高い方へ進めば、腐葉土の外へ出てしまうことが防げる。つまり、エサと生活の場に留まろうとしているだけなのだ。まさに効率の良い生き方だと思える。

 そのまま幼虫は寒い冬をじっと過ごし、翌春にはまたエサを活発に食べ始め6月には成虫になる前段階、蛹へと変わるのだ。実は小生、この蛹には苦い思い出がある。小学生時代にスーパーで売られていた蛹を購入したのだが、早くあの立派な角の生えた姿を見たくてたまらなかった小生は、その茶色い表皮を剥いてしまったのだ。当然ながら、まだ成熟していない状態だったため結局、羽化することなく……。実に可哀想なことをしてしまったと未だに後悔している。

 読後、土の中の生活こそがカブトムシ本来の姿ではないかと思い始めた。読者の皆さんも、カブトムシの飼育に挑戦してみてはいかがだろうか。成虫を購入して卵を産ませるのも良いだろう。幼虫から成虫へと育て上げるのは、実に感動ものである。

文=犬山しんのすけ

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