一生の課題図書。人類の課題図書

公開日:2012/8/31

ますむら・ひろし 宮沢賢治選集 1 グスコーブドリの伝記

ハード : PC 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:コミック 購入元:電子書店パピレス
著者名:ますむら・ひろし 価格:525円

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なんのために働くのか、と問われたら、どう答えるでしょうか。お金のためでしょうか。はたまた、生活のためでしょうか。現代人にとって、実に悩ましい命題でありますが、不朽の童話作家・宮沢賢治は本作とその生涯でもってひとつの答えを導き出しています。

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イーハトーブの森に住む木こり、グスコー家の長男・ブドリの生涯を描いた本作。絵は『アタゴオル物語』でお馴染みのますむらひろし先生で、本作も例に漏れずネコキャラが登場します。
冷害による飢饉で両親を失い、路頭に迷いながらも、懸命に働くブドリ。数々の災難に見舞われながらも、農業にも深く傾倒していきます。そして、イーハトーブにふたたび訪れる大規模な冷害を止める為に、ブドリはひとり、火山の中に消えていくのです。

―――と、筋だけ追うと無常感の漂うお話ですが、特に注目すべきはブドリの美しい精神です。波瀾万丈であり、決して裕福になることはないブドリですが、彼は常に粛々と、穏やかであり、献身的なのです。最後の最後、命を顧みず火山に消えていくまで、ブドリは少しも変わらない。幼少の頃、森で遊んだ頃の純朴な眼。ブドリはその同じ眼のまま、命を投げ出すのです。
一体ブドリは何のために働くのか。そう思いながらページをめくると…最後のページでは妹のネリとその子供たちが遊んでいました。ブドリは彼女たちの為に働いたのでした。ひいては、イーハトーブのみんなのために。みんなの未来の為に。いやはや、なんという大人物。いや、大猫なのでしょうか。

宮沢賢治は詩歌“雨ニモマケズ”でも、この朴訥(ぼくとつ)な献身について触れています。ブドリの眼、賢治の眼には一体なにが映っていたのか。死ぬまでに一度は読んでおきたい1作です。


漫画ですが、セリフなどの文はほぼ原作のままです

孤児となったブドリ達の前に現れる大人といえば、まず人さらい

怖すぎる、しまっちゃうオジサン…

彼の眼は何を見るか