京都の通りをイケメン擬“神”化! まったく新しいヒーロー物語ではんなり京気分を味わおう!

文芸・カルチャー

公開日:2021/7/10

~はんなり京都~お通り男史 浄化古伝
『~はんなり京都~お通り男史 浄化古伝』(亰大路/双葉社)

 なかなか旅行に出かけられないご時世だが、ポストコロナの時代が訪れたら、すぐにでも京都に出かけたい。神社仏閣巡りはもちろん楽しいが、あの碁盤の目状の街並みをあてどなく彷徨うだけでも、まるで魔法でもかけられたみたいに気分が高揚してくるのだ。

 そんな京都が大好きという人にオススメしたいのが、ファンタジーライトノベル『~はんなり京都~お通り男史 浄化古伝』(亰大路/双葉社)だ。京都の「通り」を擬“神”化したこの作品は、神様たちが繰り広げるまったく新しいヒーロー物語。読むと、まるで京都の街を散策しているかのような気分にさせられる物語なのだ。

 この物語は平安時代、京の街に、人間の悪意や失意が「澱(よど)」となって大量に溜まってしまったことに始まる。そして、それはやがて疫病神を呼び込む契機となり、京の街に疾病や大火をもたらしたのだった。そして、現代、平安時代と同じように、京都のあらゆる通りに澱が溜まり始めていた。この状況に危機感を抱いたのは、京都の通りに宿る神「通神(とおりがみ)」たち。どうやら澱を祓うためには、彼らを“視る”ことができる人間「神和(かんなぎ)」を見つけ、「浄歩(じょうほ)」という儀式を行う必要があるらしい。「通神」たちは、早速、神和を探し、通りを浄めることを決意するのだが――。

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 京都の南北の通りのひとつの「東洞院」は、天真爛漫ないたずらっ子。その双子ともいえる「西洞院」は、平安時代から徐々に道を狭められてきた過去があるから、ネガティブで慎重派。「京の台所」と呼ばれる錦市場がある「錦小路」は、料理が得意なアニキ分。祇園祭の鉾の巡行のメイン通りである「河原町」は、熱血系俺様キャラ…。京都の通りに宿る神様たちは、誰もが個性的。あらゆるタイプのイケメンが網羅されていて、ついつい目移りしてしまうのは私だけではないだろう。それに、道の特徴を捉えたその性格にも思わずクスッとさせられる。「通神」の解説で巡る京都散策は、街の歴史も知れてこの上なく楽しい。当然ハプニングも満載で、そのスリルもまたクセになってしまう。

 通りの浄化に協力する「神和」は、一人の人間だけが担うわけではない。何をやっても上手くいかない毎日に悩み苦しむネガティブOLや、お母さんを守れる強いヒーローになりたいと願う少年など、通りごとに「神和」になる人間は異なる。悩みを抱える人間たちは、「通神」との出会いによって、前向きな心を取り戻していく。その姿に、私たちもなんだか勇気づけられる。神様と人間たちの交流に胸が温かくなるのだ。

 あなたも個性的な神々との京都ツアーを満喫してはいかがだろうか。碁盤の目状に交わる通りのひとつひとつが、なんだかとっても愛おしい。いつか京都に行く時は、「通神」のことを考えながら京都の街を散策すると楽しさが増すこと間違いなしだ。

文=アサトーミナミ

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