泣きたい時は我慢しないで。未熟で傷つきやすい男の子たちの元気を取り戻す、珠玉のメッセージ集

文芸・カルチャー

公開日:2021/7/14

ディアボーイ おとこのこたちへ
『ディアボーイ おとこのこたちへ』(ジェイソン・ローゼンタール、パリス・ローゼンタール:著、高橋久美子:訳、ホリー・ハタム:絵/主婦の友社)

 男の子って、かっこいいし、かわいいところもあるけれど、女性から見ると理解できないことがけっこう多い。

「どうしてもっとやさしくできないんだろう」とか。「人と仲良くすることが大事なのに、相手に勝つことばかり考えるのはなぜ?」とか。それに、「“全部知っている”ってことに、どうしてこだわるんだろう」とか。知らないことがあっても、ありのままのあなたが素敵なのに。

 もっと強くなりたい。泣きたくても我慢しないといけない。そう思っているうちに、心がパンクしてしまうことがあると思う。

『ディアボーイ おとこのこたちへ』(ジェイソン・ローゼンタール、パリス・ローゼンタール:著、高橋久美子:訳、ホリー・ハタム:絵/主婦の友社)は、そんな悩める男の子たちに読んでほしいメッセージ集。

 まずは自分を信じて、人にはやさしくしよう。わかりあえる仲間を見つけよう。知らないことがあっても怖くないって知ってた? など、男の子がつい忘れてしまいがちな大切なことが、楽しいイラストとともに紹介されている。


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男の子は兎にも角にも「なりたい自分」がいっぱい

ディアボーイ おとこのこたちへ

もしも たいせつなことを わすれそうになったら
いつでも もどってくればいい
さあ ゆめにむかって とびたとう!

 そうそう、男の子って「なりたい自分」や「夢や願望」で頭がいっぱい。それはもう、女性の想像を遥かに超えるくらいに。想いが強いほど、大切なことを忘れてしまうのではないかな、と思う。だから、何度でもやり直せるってことを覚えておくといい。それも、夢を叶えるためなのだから。

誰にも悩みを打ち明けられない時、この本がそばにいてくれる

ディアボーイ おとこのこたちへ

なきたいときも あるよね?
そんなときは がまんしないで ないても いいんだよ

 強くなりたい気持ちが大きすぎて、泣くのは良くない、と考えている男の子はけっこういると思う。でも、男の子は泣かないで我慢するべきだ、なんて誰が決めたんだろう。泣きたいほどつらい時、無理して話そうなんて考えなくてもいい。この本が相棒となって、そばに寄り添ってくれるから。

「簡単なメッセージだからこそ、いつも心に問いかけて」

ディアボーイ おとこのこたちへ

「今、空気を読んでしまう人が多いですよね。周りを気にせず発言することの難しさは大人だからよくわかる。簡単なメッセージだからこそ、(この本を読んで)ずっと心に問いかけながらいてくれるといい」

 これはこの本の翻訳を手がけた、作家・作詞家の高橋久美子さんの言葉。高橋さんは、「友だちや親にも相談できない悩みを持った時に読んでみてほしい」と続けている。

 この本の翻訳にあたっては、「自分自身に向けて訳していったところがある」とも。高橋さんといえば、自然体な生き方が注目される人。本書のメッセージのひとつ「どんな時も正直でいることがいちばんの近道だよ」という言葉は、まさに高橋さん自身が体現しているのではないだろうか。

実際の親子が作り上げた、本当に大切な人に渡したい1冊

 本書は、ニューヨーク・タイムズベストセラー『ディア ガール おんなのこたちへ』シリーズの第2弾。前作は、2017年にがんで死去したアメリカの作家、エイミー・クラウス・ローゼンタールが、闘病中に、娘のパリス・ローゼンタールとともに書き上げたもの。今作は、パリスが父親であるジェイソンと一緒に書き上げたという。

 実際の親子が一緒になって作り上げた1冊には、本当に大切な人に伝えたい言葉だけが詰まっている。

『ディア ガール おんなのこたちへ』では、友だちの誕生会に呼ばれなくても大したことないということや、容姿が人と違ってもどうってことないということを教えてくれた。女性にはグッとくるメッセージばかりだった。だから今回のこの1冊は、男の子が読んでハッと気づくことが多いのだと思う。

 誰にも言えない悩みを本が解決してくれた、という話はよくあること。まだ未熟で傷つきやすい男の子たちにとって、この本が宝物のような1冊になるに違いない。この本を読んで、人を思いやる気持ちを忘れずに、人生を突き進むことをおそれない大人になりますように。

文=吉田あき

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