妻のDV、子どもの不登校……夫は家族を再生できるのか? ネットで話題のマンガがついに書籍化!

マンガ

公開日:2021/7/15

そんな家族なら捨てちゃえば?
『そんな家族なら捨てちゃえば?』(村山渉/芳文社)

「これは妻が悪い」「いや、夫がダメでしょう」「子どもが心配」「登場人物みんなどこか欠けていてクセになる」……。Twitter上や、連載サイトのコメント欄で大きな反響を呼んでいるマンガがついに書籍化される。その作品とは、『そんな家族なら捨てちゃえば?』(村山渉/芳文社)。妻からの夫へのDVをメインテーマにした内容は、ひとたび読むと、続きが気になってしかたがなくなる。ついつい他人事ではいられず、口を挟みたくなってしまうのだ。夫にDVまがいの言動をする妻と、妻とどう接していいか分からないでいる夫。両親がどうにか仲良くしてほしいと願う一人娘……。いびつな家族関係をみていると、自分の家と重ね合わせてあらゆることを考えてしまう。

 主人公は、篠谷令太郎。ごく普通のサラリーマンだが、彼の家には、妻・和美が決めた異様なルールがある。令太郎は、廊下に貼られた透明なセロハンテープを超えてはいけない。妻と子どもとは食事を一緒に取ってはいけない。「ただいま」「行ってきます」といった挨拶はしない。ドアの音を立ててはいけない。洗面所・風呂は使って良いけど、トイレは使ってはいけない。令太郎は、妻と娘から無視され、家庭内で一人、暗く狭い部屋での寝食を強いられていた。ある日、駅で具合が悪くなった令太郎を助けてくれた倉敷沙耶子は、「それってDVじゃないですか?」と指摘。令太郎は、どうにか家族を再生したいという思いを募らせていく。

そんな家族なら捨てちゃえば?

そんな家族なら捨てちゃえば?

 どうして和美は、令太郎にDVをするのだろう。それは、かつて、令太郎が和美に対して行ったある言動が影響しているらしい。だが、令太郎はそのことを思い出せない。おまけに、令太郎と和美の一人娘で中学生の一花は、不登校だ。一花が不登校だということも知らずに過ごしていた令太郎が、和美の気持ちを理解し、家族を再生できる日はくるのか。

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そんな家族なら捨てちゃえば?

そんな家族なら捨てちゃえば?

 そんな令太郎に寄り添おうとするのが、駅で彼を助けた沙耶子だ。沙耶子はシングルマザーで、一人息子の光とともに最近引っ越してきたのだという。令太郎をかなり心配しているようだが、その近づきかたは、まるで令太郎との恋愛関係を望むようで、ちょっぴり気味が悪い。令太郎自身も「あまり近づき過ぎない方が良さそうだ」と少しは警戒しているようだが、今後、その関係がどのように展開していくのかも目が離せない。

そんな家族なら捨てちゃえば?

 夫婦の不和に、子どもの不登校、親切だが不穏な女の影……。篠谷家の問題は尽きそうにない。一番の問題は、令太郎と和美がしっかり話し合うことができないということ。しかし、それは、どちらか一方に非があるわけではなく、どちらも直すべきところがありそうに思える。

そんな家族なら捨てちゃえば?

 パートナーとして選んだはずの人に理解されないことは、この世界にたった一人取り残されたような深い孤独を感じさせるものだ。きっと和美も令太郎もそんな日々を過ごしているに違いない。嫌ならば別れればいいのに、別れずにいる2人。互いが互いのことを思いながら、向き合うことができずにいる状況は、見ていて歯痒い。はやく2人が腹を割って話し合える日がくればいいのにと、願ってしまう。

 大人であれば、誰もがいつも正しい判断ができるかといえば、そうではないようだ。大人だって、毎日、間違いの連続を過ごしている。このマンガはそんなことを思い知らされるような作品だ。夫婦関係が上手くいっている人も、どうも上手くいっていないという人も、この作品には強い衝撃を受けるに違いない。家族を再生しようとあがく、一人の男の運命を見届けたくなってしまうに違いないだろう。

文=アサトーミナミ

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