怒涛の展開と徐々に明かされていく謎が心地いい! アニメもスタートした原作小説『探偵はもう、死んでいる。』に“巻き込まれ”よう!

小説・エッセイ

公開日:2021/7/12

NEO HUMAN 探偵はもう、死んでいる。
『探偵はもう、死んでいる。』(二語十:著、うみぼうず:イラスト/KADOKAWA)

 偶然の出会いが人生を大きく変えることがある。この出会いに乗るか、それともスルーして今まで通りの道をいくか、良し悪しは後にならなければ分からないが、こうした経験を積み重ねることでより多くの経験が得られるような気がする。しかし、あまりにも続くというのは――。『探偵はもう、死んでいる。』(二語十:著、うみぼうず:イラスト/KADOKAWA)は、そんな巻き込まれ体質な主人公と、ある探偵の物語。2021年7月よりTVアニメも放送されている。

 本作品の主人公は、どこで何をしていても何かしらに巻き込まれてしまう超巻き込まれ体質の男子高校生・君塚君彦。君塚はある日、中身の分からないアタッシュケースを持たされて飛行機に乗っていた。そしてそこで「お客様の中に探偵の方はいらっしゃいませんか?」という呼びかけに遭遇し、隣に座っていた搭乗者がシエスタという名の探偵で、しかもその探偵に「君 私の助手になってよ」と手を握られる。

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 ここまででもいったいどういう状況だとツッコミを入れたくなるほど巻き込まれているが、まだ終わらない。実は、上記のアタッシュケースを運ばされる巻き込まれは、さらなる巻き込まれのフラグでしかなかったのだ。そして君塚はその後3年もの間、シエスタの本名すら知らないまま、彼女の助手として目もくらむような冒険劇を繰り広げることになる。しかもその関係は、彼女の“死”という形で終わりを迎える。そう、探偵シエスタはもう、死んでいるのだ。

 そして彼の巻き込まれ人生は、シエスタが死んだあとも続いていく。本作のメインとなる舞台は、シエスタが死んだ1年後の世界。君塚は、探偵の助手という立場から解放されて普通の高校生として生活していた。しかし突然目の前に現れた同級生・夏凪渚によって、再び彼の平穏な日常は壊されることとなる。渚は、君塚を探偵と見込んで“ある人”を探してほしいと要求してきたのだ。その“ある人”とはいったい誰なのか。なぜその人を探しているのか……。これら一つ一つの出来事が、少しずつ繋がり線となっていく。

 読み始めはインパクト強めの状況に引き込まれ、そこから状況が少しずつ明かされていく。「なぜ」「どういうこと」という疑問が一つ一つ解消されていく感覚がとても心地いい作品だ。

 そして2巻半ばでいったん一件落着したと思ったら、後半ではまた新たなトラブルに巻き込まれていく。しかし、今後も君塚は「シエスタの遺志」とともに、巻き込まれ体質故の経験を活かして立ち向かっていくのだろう。引き続きどんなことに巻き込まれていくのか、目が離せない。

 また、2巻の巻末には、原作小説の著者・二語十による書き下ろしショートストーリーも収録されている。アニメも始まりますます盛り上がりを見せてくれること間違いなしのこの『探偵はもう、死んでいる。』。彼らの世界に巻き込まれ、助手としてともに推理を楽しんでみては?

文=月乃雫

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