仕事に旅をさせる新しい働き方「ワーケーション」の真の効果とは

ビジネス

公開日:2021/7/15

ワーケーションの教科書 創造性と生産性を最大化する「新しい働き方」
『ワーケーションの教科書 創造性と生産性を最大化する「新しい働き方」』(長田英知/KADOKAWA)

 仕事・移動・生活……すべてがオンラインになった社会で、私たちはどうのように働き、そしてどう生きるべきなのか? また、リモートワークが普及し、通勤・出張や、何気ない雑談を失い、働きづらさを感じたり、アイディアが生み出しにくくなったと思う人も多いはず。

『ワーケーションの教科書 創造性と生産性を最大化する「新しい働き方」』(長田英知/KADOKAWA)では、「ワーケーション」が創造性と生産性を両立する働き方として、個人・企業・さらには誘致する地方自治体の何を変えるのかを考察している。

 ワーケーションとは、「ワーク=仕事」と「バケーション=休暇」を組み合わせた造語で、観光地など自宅以外の非日常の場所でリモートワークを行いつつ、休暇を楽しむ新たなワークスタイルを指す。海外で旅をしながらリモートで仕事をしたり、温泉地で宿泊しながら仕事をすることが該当する。

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 著者の長田英知氏は、Airbnb Japanの執行役員で、グッドデザイン賞審査委員や、京都芸術大学客員教授も務め、自身も複業という新しい働き方を実践し、創造的な働き方に造詣が深い。

 

 本書では、移動距離が多いほど人間の創造性は高まることが、調査や事例をもとに紹介され、移動と創造性の相関関係から、ワーケーションが個人の業務の創造性をいかに高めるのかを述べている。

 つまり、在宅ワークが広がっている中で、創造性を高めるためには、移動をしなくてはいけないという矛盾をはらみ、その解決策がワーケーションだと著者は提示している。

 まだ始まったばかりの試みであるワーケーションについて、本書は国内外の先進的な事例や調査を数多く収録している。海外企業においては、1200人以上の全社員がリモートワークで働いているGitLabや、文書でのコミュニケーションを重要視しているBasecampやAmazonなどを引用し、真のリモートワークを実現するために必要なビジネスコミュニケーションを提示している。リアルかバーチャルか、同期か非同期かといったことを意識してコミュニケーションをとることが大切で、どのツールをどのような局面で使うべきか、リモートワークが普及した今だからこそ、働き方のヒントが詰まっている。

 また、国内企業においても、ユニリーバ・ジャパンや、三菱地所、日立製作所、JTBなどの調査や事例を引用し、ワーケーションの効果や導入不安への解決法について言及している。例えば、経営者、管理職からの視点では、会社に出社しないことから帰属意識低下の不安が1つに挙げられる。それに対して、2020年6月にNTTデータ経営研究所、JTB、JALが連携して沖縄県のカヌチャリゾートで行ったワーケーション実証では、自宅から離れたリゾート先で仕事をすることで、仕事の生産性が上がり、メンタルの改善につながるだけでなく、組織に対するコミットメントも12.6%向上し、社員の帰属意識が高まることが証明された。またワーケーションによってもたらされた仕事のパフォーマンス向上は、ワーケーション終了後1週間も持続しており、残存効果があることがわかった。

 その他にも、ワーケーションに伴う公正・公平な人事制度や、労災・リスク管理といった領域まで網羅し、ワーケーションを導入することによって生じる不安を解消している。

 さらに、地域・自治体にとっても、ポスト・コロナ社会で勝ち組となるため、関係人口を増やす施策として、ワーケーションを提案している。ワーケーションとして訪れた人々に対して、「多様な人が集まる場」を仕掛けることこそが大切で、コワーキングスペースや、喫茶店などのサードプレイスの重要性を説き、新しい地方観光のあり方も示している。

 ワーケーションを早い段階で取り入れている北海道や、嬉野温泉、ハワイなどの事例も引用していて、実際にワーケーション先を探すことも可能である。

 本書は、ワーケーションを網羅的に紹介し、ワーケーションをしてみたい人にも、個人の働き方を見直したい人にも、制度導入を検討している企業や地方自治体の人にも、ポスト・コロナ社会の働き方を考える上でおすすめの1冊だ。

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