私たちはなぜウッチャンが好きなのか? 共演者の言葉から知る「内村光良リーダー論」

ビジネス

更新日:2021/9/15

チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論
『チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論』(畑中翔太/朝日新聞出版)

 世の中には、リーダー論をテーマにした本があふれている。しかしその多くは、タイトルや表紙から「強いリーダー」のイメージを感じさせるものだ。自分らしくチームをまとめたい人や、腕力で引っ張っていくようなリーダー像にどうも馴染めないという人は、この『チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論』(畑中翔太/朝日新聞出版)から学べることが多いだろう。

 内村光良はご存じのとおり、ウッチャンナンチャンとしてデビューしてから、数々のバラエティ番組の顔としてヒットを生み出してきたお笑い芸人。「紅白歌合戦」の総合司会を4年連続で務める、国民的な人気者だ。生命保険会社が新社会人となる学生に聞いた「理想の上司ランキング」において5年連続で1位に選ばれるなど、リーダー的存在としても広く認められている。

 本書は、広告やマーケティングの企画、制作に携わる著者が、広告制作の現場で内村光良と仕事をしたことをきっかけに、内村光良のリーダーシップの本質を言語化して、働く人々に届けたいという思いで書いた1冊だ。執筆にあたり、多くを語らない人だというウッチャン自身ではなく、彼をよく知る関係者を取材。木村多江や中川大志、ウド鈴木、塚地武雅、いとうあさこといった共演者のほか、テレビ番組のプロデューサーや、映画や小説を共に作ったスタッフ、ヘアメイク、スタイリスト、さらには彼のいとこで、上京後に内村と同居していた放送作家・内村宏幸氏などその数は24名。彼らの発言や事実から、番組や舞台を率いる内村の存在に切り込み、チームや部下が自分で考えて動き、成長していく「内村光良流のリーダーシップ」を解き明かしている。

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 50代になった今に至るまで、自分が誰よりも汗をかき、難しい課題にチャレンジして、背中を見せる。一方で、肩書以外の仕事を進んで行い、チームの先頭だけでなく、状況に応じてメンバーと並ぶ役やサポート役にもまわる。メンバーに自然と考えさせ、押さえつけるのではなく自由にやらせるが、最後の責任は自分が負う。その結果、内村の周りにいる誰もが「内村さんを笑わせたい」と能動的に働き、良いコンテンツを作っているのだという。

 関係者からは、彼の人間性を示す具体的なエピソードも飛び出す。たとえば、監督・主演映画『ピーナッツ』の撮影時、雨天で荒れたグラウンドの整備待ちの休憩時間に、内村がスタッフに交じってグラウンド整備をしていたというエピソードや、若いスタッフにも意見を求め、どんな人の話も真剣に聞く彼の姿勢など、大御所になった今も謙虚で、学びをやめない内村の言動の数々に心を動かされる。

 内村の人間性を語る関係者の証言も、ニュータイプのリーダーとしての彼の凄さを伝える。自分が一番のお客様として番組を楽しみ、他人のパフォーマンスに、腹を抱えて誰よりもよく笑う。スタッフを名前で呼び、気分の波が無く、人が想像できる一歩先まで気遣いをする。舞台裏で緊張して震える弱さを見せることや、隙があり、つっこめる存在であることも彼の魅力だ。20代前半の俳優・中川大志が内村を「大好き」と語ったその言葉に、内村光良のリーダーとしての底知れない力を感じた。

 関係者の言葉からは、本人が「こういうリーダーであろう」と強く意識してやっているわけではないことも伝わる。しかし、自然に愛されるその存在感から、我々は気負うことなく彼からリーダーとしての姿勢を学ぶことができる。内村の口癖は、「いや俺はまだまだだなぁ」だという。彼のストイックで芯を貫く姿勢、謙虚さや優しさ、そして年齢を重ねても努力を続けられる力が、優れたリーダーである彼の根底にあるとわかる。特殊なスキルや強烈な存在感よりも大切なリーダーとしての心得を気付かせてくれる1冊だ。

文=川辺美希

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