14トン金をバラまき金相場を大暴落させた!? スケールが違う、世界の大富豪たちの「無駄遣い」とは

マンガ

公開日:2021/8/3

世界の大富豪とんでも無駄遣い伝説~奇妙な金の使い方~
『世界の大富豪とんでも無駄遣い伝説~奇妙な金の使い方~』(真山知幸:原作、葛西りいち:漫画/竹書房)

 最近、宇宙旅行のニュースがわりと聞かれるようになったが、まだ非常に短時間であり、多額の費用もかかる模様。ゆえに参加できるのは、いわゆる「大富豪」と呼ばれる人々であり、人によっては「無駄遣い」に見えるかもしれない。まあその判断は未来に委ねるとしても、実はかつて世界各地で壮大なスケールの「無駄遣い」が行なわれていた。『世界の大富豪とんでも無駄遣い伝説~奇妙な金の使い方~』(真山知幸:原作、葛西りいち:漫画/竹書房)には、古今東西の有名な大富豪たちによる驚きの「無駄遣い」が漫画で楽しく再現されている。

 実のところ「何をもって無駄遣いとするのか」は、おそらく人それぞれであり、大富豪たちも自分の行為がそうだとは考えていなかったろう。それでもハタから見れば無駄遣いとしか思えないような金遣いではあるわけで、とりあえずいくつか紹介してみよう。

「大金持ったアイドルオタク」ウィリアム・ランドルフ・ハースト(1863~1951)

 アメリカで「新聞王」と呼ばれるほどの大富豪。本書ではハーストを「大金持ったアイドルオタク」だと称している。ではそんな彼は、どんな無駄遣いを行なったのか。本書によれば50代だったハーストは18歳の無名ダンサー・マリオンに恋をする(もちろん妻は別にいる)。彼は女優になりたいというマリオンのために、なんと映画会社を設立して主演女優に抜擢。映画が封切られると、傘下の新聞各紙に絶賛記事を掲載させたのである。しかしその甲斐もなく映画は不評。しかしハーストは、さらにマリオンのために豪邸を建築。この豪邸、なんと庭に「サファリパーク」まであったという。しかもハーストは暖炉の位置にまでこだわり、気に入らないと基礎からやり直した。そのため彼が生きているうちにこの豪邸は完成せず、かかった費用は3456億円にものぼるとか……。愛ってスゴイですね。

advertisement

「フォード・モーター・カンパニー」の創設者 ヘンリー・フォード(1863~1947)

 アメリカの自動車会社「フォード・モーター・カンパニー」の創設者。普通に「成功者」のイメージがあるが、彼の無駄遣いはどんなものだったのか。フォードは自動車の部品の多くを自社生産していたが、タイヤの「ゴム」だけは輸入に頼っていた。ヘンリーはゴムを自力で生産するため、ブラジルで200万エーカーの土地を購入。そこを切り拓いて、近代的な農地を造成したのである。そこにはゴム園だけではなく、工場や研究所、そして働く従業員のための社宅や学校などの施設も整備され、街にかかった費用は1500万ドル(約900億円)にもなるという。しかし肝心のゴムは病気の蔓延で栽培に失敗し、さらに現地従業員にアメリカ的な生活を押しつけ暴動が起きたり、伝染病が流行したりなどしてこの計画は頓挫。結局、1本のタイヤも作られないまま撤退することに……。結果だけ見れば、確かに無駄遣いかもしれないが、企業の投資が常にうまくいくワケもないだろう。同情はできるのだが、やはり額が大きすぎたか。

「人類史上最大のお金持ち」マンサ・ムーサ(?~1337?)

 本書いわく「地球で一番のお金持ち」。この人物、かつてアフリカに存在した「マリ帝国」の王様で、この国は滅亡している。マリ帝国は「金の一大産出国」であり、とにかくお金持ちだったという。そしてこのマンサを一躍有名にしたエピソードがある。この国には王位に就くための試練として「メッカ巡礼か、それに準ずる難行の成功」があった。マンサは敬虔なイスラム教徒だったので、迷わず「メッカ巡礼」を選択。彼は大量の金塊をラクダで運ばせ、6万人の家臣団と、1万人以上の奴隷を引き連れて巡礼の途についたという。一行は金をバラまきながら進み、使った金の量は14トンにものぼるとか。その結果、金の相場は大暴落し、その影響は12年も続いたという……。ちなみにマンサの資産は一説には4000億ドル(約35兆円)といわれ、いまだに人類史上最大のお金持ちらしい。

 繰り返しになるが、物の価値など人それぞれであり、何に金をつぎ込むかは個人の自由であろう。人に迷惑さえかけなければよいと思うが、額が大きくなるとそうもいっていられなくなるのだろうか。そういう意味では、人に迷惑をかけない程度の資産が丁度よいのかと。……決して負け惜しみじゃありませんよ?

文=木谷誠

あわせて読みたい