呪いの藁人形に神隠し、こっくりさん……。大学生と准教授の凸凹コンビが、怪現象の謎を解き明かす!

マンガ

公開日:2021/8/14

准教授・高槻彰良の推察
『准教授・高槻彰良の推察』(相尾灯自:漫画 原作:澤村御影:原作、鈴木次郎:キャラクター原案/KADOKAWA)

 誰だって一度は耳にしたことがあるであろう、怪異譚や不可解な噂話。それらは日常の隙間からすっと顔を出し、聞く者を震え上がらせる。それはなぜか。発生原因や因果関係が「説明不可能」なことが多いからだ。そういった「よくわからないもの」を人は恐怖する。もしかしたら、自分もその怪異に見舞われてしまうかもしれない。そのとき、一体どうすればいいのだろう……。

 この「よくわからないもの」に論理的な解答を見出そうとする人たちの活躍を描くマンガがある。それが『准教授・高槻彰良の推察』(相尾灯自:漫画 原作:澤村御影:原作、鈴木次郎:キャラクター原案/KADOKAWA)だ。本作は澤村御影さんによる人気小説をコミカライズしたもので、小説版はすでに第6巻+番外編も刊行。8月からはHey! Say! JUMPの伊野尾慧さん、King & Princeの神宮寺勇太さんによる豪華共演で実写ドラマも放送されている。

 本作のメインキャラクターはふたり。大学生の深町尚哉にはどこか陰がある。青和大学の新入生だが、人と距離を置き、交わろうとしない。その理由は、彼が「人の嘘がわかる耳」を持っているから。他人の発言に嘘が混じっていると、声が歪んで聞こえてしまうのだ。そんな不思議な能力を持ってしまったため、深町は他者と親しくなることができない。

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准教授・高槻彰良の推察

准教授・高槻彰良の推察

 もうひとりが、青和大学で民俗学を教えている准教授・高槻彰良。シュッとした見た目で女子生徒からの人気も抜群。ところが彼には少し変わっているところがあった。それは「怪異好き」という点。生徒たちから都市伝説のような噂話を収集しては、その真偽を確かめようとする。そう、高槻はきっぱり言う。

准教授・高槻彰良の推察

…僕が知りたいのははたしてこの世に
本物の怪異は存在するのかってことだよ

本当にあるのであればぜひ知りたい
会ってみたいし遭ってみたい

 はっきり言って、物好きだ。深町は高槻のことを怪しむ。しかし、なぜか高槻に気に入られてしまい、流されるままに怪現象の調査に連れ出されてしまうことに。そしてふたりは、数々の怪事件に遭遇し、その謎を解き明かしていくことになるのだが――。

 本作で扱われる事件は、どれも不気味なものばかりだ。空き部屋から聞こえてくる物音、藁人形の呪い、神隠しにこっくりさん……。いずれも怪異譚や都市伝説として有名であり、なんとなく知っている人も少なくないだろう。

准教授・高槻彰良の推察

 事件の被害者たちは、みな一様に怯えている。それもそのはず、すべてのことが「説明不可能」だからだ。

 しかし、深町と高槻のコンビは、それらをすべて解決してしまう。もちろん、お祓いや除霊といった方法を用いるのではない。あくまでも論理的な思考で、現実的な解を示すのである。ここが本作の面白いところだ。事件自体は得体のしれない怪現象なのに、謎解きは非常にロジカル。言わばふたりは名探偵コンビである。答えが導き出される過程には説得力があるため、ミステリー好きも唸らせられるだろう。

 一方で、怪異そのものを完全に否定しているわけでもない。実は深町も高槻も、過去に不可解な現象に巻き込まれてしまった経験を持っているからだ。それぞれが体験したことには、答えが出ていない。ここで高槻のセリフがリフレインする。

…僕が知りたいのははたしてこの世に
本物の怪異は存在するのかってことだよ

准教授・高槻彰良の推察

 本物の怪異は存在するのか。だとすれば、深町や高槻が遭遇したのは、それだったのか。果たして……。

 この夏にうってつけのホラーミステリー『准教授・高槻彰良の推察』。深町、高槻のふたりと一緒に、さまざまな怪現象の裏に隠された真実を探求してもらいたい。ただし、もしかするとそこには“本物”があるかもしれないのでご注意を。

文=五十嵐 大

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