「この家、何かがおかしい」二重扉で窓がない独房のような子供部屋。間取りから感じるただならぬ事情

文芸・カルチャー

公開日:2021/8/14

変な家
『変な家』(雨穴/飛鳥新社)

 住まいにも歴史がある。賃貸物件の多くや中古住宅は、自分の前に誰かが住んでいたのは明らか。しかし、ふと間取りを調べると“奇妙な空間”を見つけることもある…。

 不動産ミステリー『変な家』(雨穴/飛鳥新社)は、YouTubeで700万回以上の再生数を記録した人気コンテンツの“完結編”。正体不明の仮面を被ったYouTuber・雨穴さんが奇怪な住宅の謎に迫る。

開放的で明るい住宅。1階にあった“謎の空間”の意味

 オカルト専門のフリーライターとして活躍する「私」。日々の仕事では「誰もいないはずの2階から足音がする」「リビングにひとりでいると視線を感じる」など、とにかく“家”にまつわる奇怪な話をよく耳にするという。

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 しかし、それらと少し違う話を聞いたのは2019年9月。知人から「相談したいことがある」と連絡を受けた「私」は、知人が購入しようとする住宅の間取りに疑問を抱いた。

変な家

 閑静な住宅街に建つ2階建ての中古物件。内装は開放的で明るい。ただ、1階の間取りを見ると、台所とリビングの間になぜか“謎の空間”がある。不動産屋に聞いても理由は分からず、「私」は知人の設計士・栗原さんに相談した。

 間取りを見た栗原さんは、謎の空間は「意図的に作られたもの」と答えた。図面をよく見ると「本来必要のない2枚の壁によって作られている」と分かる。目的はおそらく「収納スペースとか何かにする予定」があったから。

「私」が「工事が進んでいて、間取りを変更することができず、空間だけが残された」と納得すると、栗原さんは「そう考えるのが自然ですね」と答えた。ただ、本当に問題があったのは1階の間取りではなかった。栗原さんは「おかしいのは2階の間取りなんです」と話し始めた。

真の異変…。まるで独房のような2階の子供部屋

「私」の知人が購入を迷っていた2階建ての中古物件。2階の中央には子供部屋がある。ただ、間取りをよく見ると部屋へ入るためには扉を2つ通らなければならなかった。

変な家

 さらに、栗原さんは「ドアの位置もおかしい」と指摘した。その家の2階へ上がってから、子供部屋へたどり着くまでには、両親の寝室を通ってからとかなりの遠回りをしなければならない。加えて、周囲は壁に囲まれていて窓もない。

 設計士の経験から、栗原さんは「だいたいの親御さんは、子供部屋はなるべく日当たりを良くしたい、と希望されるものなんですが…窓のない子供部屋なんて、少なくとも一軒家では見たことがない」と「私」へ伝えた。

 もう1つ、気がかりだったのは2階のトイレが子供部屋の中に設置されていたこと。窓がなく、入り口は二重扉で、トイレ付き…。「私」はその間取りに対して「まるで独房みたいですね」とつぶやいた。理由は何か。栗原さんは「子供を徹底的に管理下に置きたい、という強い意思を感じます。もしかしたら、子供はこの部屋に閉じ込められていたのかもしれません」と推測した…。

 じつは、この話にはまだまだ続きがある。本書を読むと、今住んでいる空間すら疑いたくなってくる。

文=カネコシュウヘイ

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