上司から「いい企画出して」と言われたらどうする?元テレビプロデューサーが語る企画作りの秘訣

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更新日:2021/8/17

企画 「いい企画」なんて存在しない
『企画 「いい企画」なんて存在しない』(髙瀬敦也/クロスメディア・パブリッシング)

 ネットで誰もが発信できるようになった今、企画という言葉がぐっと身近になった。SNSを使えば比較的低予算でもプロモーションできるから、上司から「いい企画出して」「バズるやつお願い」なんて言われることもあるだろう。だが、いざ企画を考え出すと、なかなか「これだ!」と思えるものは出てこない……。

 とはいえ、いわゆる名プロデューサーと呼ばれる人たちも、苦労せずひらめき続けているわけではない。本書『企画 「いい企画」なんて存在しない』(髙瀬敦也/クロスメディア・パブリッシング)を読めば、彼らが何を考えているのか見えてくるだろう。著者である元フジテレビの髙瀬敦也さんは、人気番組『逃走中』や『有吉の夏休み』の企画者として知られる。現在はテレビ業界にとどまらず、YouTube、マンガ原作、オリジナル家具ブランドなど、さまざまな分野で“企画”し続けている。本書では「企画とは何か?」という本質的な問いから、いざというときにすぐ使える実践的なテクニックまで、企画について語りつくしている。

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最初から「いい企画」なんてない

 いい企画なんて思いつかない……。企画を考えていると、自分のセンスのなさに落ち込むことがある。だが、著者はそもそも「いい企画」なんてものは幻想だと述べている。私たちが想像する「いい企画」は、やはり「高確率で当たる」「世の中で話題になる=バズる」企画だ。しかし、「高確率で当たる」と「バズる」は両立しないという。

 本書によれば、バズるという現象は、企画の尖った部分が相手に刺さり、大きな熱量を生むもの。だが、尖っているがゆえに、誰にも刺さらないリスクがある。だから、当たるかどうかは、結局のところ世に出してみないとわからない。大切なのは、企画をどんどん世の中に出すこと。結果的に当たったものが「いい企画」と評価されるようになるのだ。

「フリ」の効いた企画は打率が高い

 企画を確実に当てることはできない。とはいえ、その“打率”を高める方法はある。本書ではいきなり上司から「いい企画出して」と言われたときにも対応できるような、実践的なテクニックを、事例を交えて紹介している。

 たとえば、世の中の共通認識を「フリ」にして企画を作る方法。「フリ」とは、「オチ」に向かって張られる伏線のことで、お笑いや小説などでも使われる。ミステリー小説なら事件が起こるパートが「フリ」で、探偵が真相を明らかにするシーンが「オチ」だ。「フリ」をうまく活かせば、「オチ」がおもしろくなる。

 著者がプロデュースした「伯方の塩」のプロモーションでは、CMでおなじみの「は・か・た・の・し・お!」の野太い声を「フリ」にして、「伯方の塩二代目声優オーディション」を開催。誰もが「は・か・た・の・し・お!」を知っているからこそ、「どんな声になるんだ?」と気になる仕掛けだ。ワイドショーなどに取り上げられ、広告効果は10億円ともいわれている。

 本書では他にも、企画作りのためのインプットのコツや、人間の普遍的な感情を企画に取り込む方法などを紹介。私たちがテレビやYouTubeで目にするヒット企画は、センスに恵まれた人たちによるひらめきだけで作られているわけではない。少しでも打率を高めるために知恵を絞っているし、当たらなかった企画も無数にある。企画作りに自信のない人は、本書で名プロデューサーの思考回路を盗んでほしい。

文=中川凌 (@ryo_nakagawa_7

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