大学の学科を擬人化! 学科図鑑で知る、コロナ禍で再注目された学科

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公開日:2021/8/15

改訂版 大学の学科図鑑
『改訂版 大学の学科図鑑』(石渡嶺司:著、むらいっち・こきりみき:イラスト/SBクリエイティブ)

 コロナ禍でオープンキャンパスに制限が設けられたり中止になったりしても、残酷にも時間は過ぎ、進路決定の時期は迫ってくる。高校生や受験生にとって、進路決定のための材料はたくさんあるほど良い。

 ユニークな進路ガイドが登場した。『改訂版 大学の学科図鑑』(石渡嶺司:著、むらいっち・こきりみき:イラスト/SBクリエイティブ)は、150以上の多彩な学科を、リアルなデータと擬人化イラストとを組み合わせながら紹介している。

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ライトノベルやアニメも守備範囲! 「国文学科」

 例えば、「文学部一家の長男」である国文学科は、こんな感じ。

改訂版 大学の学科図鑑 P.008-009

 擬人化されたキャラクターは日本、文学、古典などのイメージを体現している。国文学科と聞けば、多くの人がこのキャラクターのような学科をイメージとして思い浮かべるかもしれないが、本書を読めば近年の同学科はライトノベル、マンガ、アニメなども含み、触れる範囲が広いことがわかる。また、文学部は比較的就職に弱いイメージをもたれやすいが、その理由は「教員・公務員志望が多い」「フリーランス志向の学生が多い」「縮小傾向にあるマスコミ業界志望者が多い」ことなどが影響しており、これらにこだわらなければ商社、メーカー、金融まで受け入れ先が意外と多いという情報も仕入れられる。

コロナ禍で必要とされた「哲学科」

 さて、コロナ禍によって、学科の見られ方や人気に変化が現れ始めている。本書から、ウィズコロナ時代に魅力的な学科が見えてくる。

 哲学科といえば、就職に不利で、変わり者が集まるという負のイメージをもたれがちではないだろうか。

改訂版 大学の学科図鑑 P.012-013

 確かに、本書でも実話として「就職は、まあ、期待しないでください」とオープンキャンパスの学科説明で担当教員から言われたという例があるように、就職面ではいぜん厳しいのかもしれない。しかし、本書は同学科を「コロナショックで最も必要とされた学問」として紹介している。コロナ禍で社会は激変した。渦中ずっと「医療が先か、経済が先か」といった議論が繰り返されている。哲学科では、有名な「トロッコ問題」のように、どちらかを取ればどちらかがダメージを負うといった正解のない問いに取り組む。激変の時代にあって、就職だけを追い求めては得られない“生きやすさ”を同学科では得られるのかもしれない。

AI・IoT…就職に強い「情報工学科」

 コロナ禍以前からAIやIoTで注目されていたが、コロナ禍中でオンライン授業やテレワークなど非接触型の生活様式が求められる中で、IT関連企業の伸びが好調だ。情報工学科は、人工知能を含む情報技術を工学的に利用するための学問分野で、ウィズコロナ時代にさらに人気を高めそうだ。

改訂版 大学の学科図鑑 P.118-119

 本書によると、IoTの流れが続くこともあり、機械・自動車などの業界からの求人が増えており、卒業生が就職難に陥ることは今後も考えにくい。本書は、機電系に次いで就職に有利な学科として推している。

変化の時を迎える「家政学科」

「家政学科」と聞くとあまり馴染みがないかもしれない。しかし、「生活科学部」「生活環境学部」といった名前なら知っている人がいるだろう。

改訂版 大学の学科図鑑 P.164-165

 実は、衣食住や生活全般の質の向上を目指す「家政学科」は、1990年から「生活」を冠する学科名に衣替えするトレンドが全国の大学で起きた、と本書。就職先は流通・小売業界、サービス業、教員の三本柱がメイン。学びは「家政」でも、しっかりと外で働く卒業生が多い印象だと本書は述べる。女子率が低い工業大学でも家政学科が設置されるケースが見られ、ウィズコロナ時代に就活を幅広く進めたい男子学生の志望者が増えることが予想できる。

 この他にも、コロナショックの需要減にもかかわらず意外と進学を敬遠するには当たらない学科、水産大国としての日本をリードする人材になれる学科など、高校生や受験生にとって目からうろこの情報がギッシリの本書。ウィズコロナ時代に向けた進路選びを悔いなく進めてもらいたい。

文=ルートつつみ(https://twitter.com/root223

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