前世のカタキが現世で恋のお相手に…!? 前世・アザラシの女性が前世・シロクマのイケメンと再会するラブコメディ

マンガ

更新日:2021/8/15

今度は殺されたくないアザラシさん
『今度は殺されたくないアザラシさん』(魚住ユキコ:原作、さんかく。:作画/一迅社)

“前世”で自分を喰い殺した天敵が、現世で爽やかイケメンとなり目の前に現れたら、恋は始まるのか――!? 原作:魚住ユキコ氏、作画:さんかく。氏によるマンガ『今度は殺されたくないアザラシさん』(一迅社)は、そんな難題にドギマギしながら立ち向かう、とってもキュートなラブコメディだ。

 主人公は、人の前世が視える特殊能力を持つ海野まひる(24)。現世ではクールビューティーな会社員だが、前世は北極のアザラシ。寝ている時にシロクマに襲われ、喰い殺された記憶が鮮明に残っていた。

 そんなある日、まひるが働く食品メーカーの企画営業部に、帰国子女で爽やかイケメンの北村律(24)が入社してくる。彼を見た瞬間、まひるはひどく動揺する。なぜなら律こそが、前世でまひるを喰い殺したシロクマだったからである…!

 まひるは、前世で非業の最期を遂げたことを、今でも夢に見るほど思い悩んでおり、現世では、食べられる心配のない「人間」に生まれたことに安堵していた。しかし、前世の天敵に思わぬ形で再会したことで、舐められぬよう身を引き締め、警戒モードに入ってしまう。一方、律はなぜかまひるの存在が気になって仕方がなくて――!?

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 本作は、現世でも何かと前世に振り回されるまひると前世の天敵たちによる、クスッと笑えてキュンとする、ほのぼのとしたマンガである。面白いと感じたポイントはいくつもあるが、中でも、「前世の習性は大なり小なり現世にも影響を及ぼす」という設定は愉快だった。

 爽やかイケメンの律は、まひるを前にすると、朝ごはんを食べてきたばかりにもかかわらず急にお腹が空き、お腹を鳴らしてしまう。まひるはそれを見て「やっぱ天敵!」と震え上がる。だが律は、仕事でまひるがミスをすればスマートにフォローに回るし、まひるへの好意をまっすぐに伝える素直さも持っている。現世では完全に「完璧で優しいイケメン」で、2人の微妙にすれ違う恋模様に何度もときめいてしまった。

 また、少女のように可愛らしい企画営業部・部長の前世が織田信長で、商品を置かせてもらっている大手スーパーのクールな店長の前世が今川義元…という歴史的人物で、2人が現世でも商品を巡り火花を散らし合いながら交渉する、よみがえる「桶狭間の戦い」も見応えがあった。

 他にも、前世がたぬきだったり、シャチだったりする個性豊かなイケメン社員たちの面々が、前世の特徴を受け継ぎつつ、まひると律の恋に絶妙に絡んでくるのも面白い。前世の記憶があるがゆえに、律の気持ちにうっすら気づきつつも、自分の気持ちに素直になれないまひる。前世のカタキが現世では恋のお相手に――!? という運命のイタズラは、今後どんな胸キュンを届けてくれるのだろうか。ちなみに、まひるの前世のアザラシは、とっても丸くてほんわかしており、見ているだけで癒されるので、お疲れの方にも強くおすすめしたい作品である。

文=さゆ

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