あさのますみさん作! 子どもに「他者との関わり方」を伝える絵本『アニマルバスとくものうえ』

文芸・カルチャー

公開日:2021/8/27

アニマルバスとくものうえ
『アニマルバスとくものうえ』(あさのますみ、こてらしほ/ポプラ社)

 子どもたちが大好きな「動物」と「バス」が一緒になった! パステルカラーとふんわり可愛いイラストにハマる人も続出のこてらしほさんが描くシリーズ第5弾『アニマルバスとくものうえ』(ポプラ社)が刊行されました。2017年にはテレビ東京「きんだーてれび」内でミニアニメが放送され、絵本シリーズが12万部を超える人気作品です。

 ストーリーは、作家であり声優でもあるあさのますみさんが手がけたもの。本作も思わぬ事件が巻き起こるなか、アニマルバスたちの可愛い頑張りがあふれ、見どころたっぷり!

アニマルバスとくものうえ
©クーリア

「ささが大好物でがんばりやさんのパンダバス・ファンファン」「道にくわしく、しっかりもののクマバス・ベアード」など、その動物ならではの特徴が当てはめられたアニマルバスたち。本作で活躍するのは、ウサバスのラビィ。甘えん坊の末っ子的存在で、長い耳をぷるぷると回して“ちょっとだけ”飛ぶことができます。

advertisement

 明日はピクニックの日。楽しいピクニックを考案するファンファン、走りやすい道を完璧に調べるベアードなど、みんな大活躍。でも、いちばん小さなアニマルバスのラビィは、まだ自分にできることが見つかっていません。もっと役に立ちたいのに…。

アニマルバスとくものうえ
©クーリア

 ピクニック当日、みんながしょんぼり顔をしています。これから雨が降るらしく、残念だけど、ピクニックには行けなそう。その時、何かがぽてんと上から落ちてきたようで…。ピンときたラビィは、耳を力一杯まわして、そのもふもふした生き物を建物のてっぺんまで運びました。ところが、もふもふのおうちは、もっともっと上。なんともふもふは、くものうえからやってきたのです。

アニマルバスとくものうえ
©クーリア

 もふもふのパパとママに助けられて、もふもふを無事にくもの上まで送り届けたラビィたち。聞けば、もふもふは大事なぬいぐるみをなくし、探しているうちにくもの上から落ちてしまった様子。そこでラビィたちが探し物のお手伝いをすることに。

 くもの上は広くて、ぬいぐるみはなかなか見つかりません。ラビィは、空を飛んだら見つけやすいかもと挑戦しますが、探し物をして疲れてしまったため力が出ず……。けれど、もふもふの泣きそうな顔を見たラビィは一念発起。あることをみんなに提案します。

 くもの町はどこを眺めても、ふわふわ! このページに限らず、本書には細部にもこだわりが詰まっていて、ずっと眺めていても飽きることがありません。くもの町には、もふもふの花壇にパン屋、雪だるまならぬ“くもだるま”や、星の形のおうちもあって素敵。

 ラビィは無事にぬいぐるみを見つけられたのでしょうか? くもの町を眺めながら一緒に探してみましょう。物語の終盤にも、ピクニックの行方や、もふもふとのお別れシーンなど、見どころがいっぱいです。

他者のなかで自分の役割を見つけて成長

 自分に役に立てることがないかと悩んでいたラビィ。もふもふを助けたいという想いからできることを見つけ出し、うまくいかなかった時も、助けを借りて目的を果たすことができました。“自分にできること”は、周りとの関わりの中で見つかることもある、と本書からは伝わってきます。同時に、お互いに助け合うことで、できることもたくさんあります。助けたほうも助けられたほうもうれしい気持ちになりますよね。『アニマルバスとくものうえ』は、お友だちとの関わりが増えてきた頃の子どもに読んであげたい絵本だと感じました。

 ラビィはじめ、フワフワと可愛いアニマルバスたちが力をあわせて課題に立ち向かっていく姿を見ていると、大人もキュンキュンするし癒されます! なかなか外に出られない今の時期、ふんわりと非日常へと連れ出してくれる一冊。ピクニック気分で読んでみてはいかが?

文=吉田あき

あわせて読みたい