うまくなりたいと願う、すべての絵師に捧げる。さいとうなおき「気まぐれ添削」シリーズの公式テキスト

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公開日:2021/9/5

さいとうなおきのもったいない! イラスト添削講座
『さいとうなおきのもったいない! イラスト添削講座』(さいとうなおき/KADOKAWA)

 イラストを描き始める理由やキッカケは人それぞれだが、誰でも思うのは「もっとうまくなりたい」ということ。そんなときの強い味方になってくれるのが『さいとうなおきのもったいない! イラスト添削講座』(KADOKAWA)だ。


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 著者のさいとうなおきさんは、多摩美術大学卒業後、ゲーム会社を経てフリーのイラストレーターに。YouTubeでは、イラストの知識やテクニックを発信するクリエイター活動も行う(チャンネル登録者数は2021年8月現在59万5000人)。

 本書は、YouTubeで人気の「気まぐれ添削」シリーズの内容を紹介しているものだ。『気まぐれ添削』では、視聴者が応募したイラストを、さいとうさんが動画内で「ここをこうしたらさらによくなるのでは?」というイラストを描くうえでのポイントを説明しながら添削してくれる。

 印刷物となった講座の利点として、要点があらかじめ示されているので、ポイントをつかむのに適していて見返したい場合もパッと見返すことができる。

 もちろん本書から入った人にも、YouTubeの動画はおすすめだ。添削していく過程が見られるのは、動画ならではのメリットで勉強になる。ぜひ動画と印刷物のイイトコ取りをしてほしい。

 しかし添削と聞くと、具体例があるのでわかりやすい反面、アドバイスが限定的なのでは? なんて気になるかもしれない。でも、それは心配ご無用。

 例えば、Chapter1の「キャラクター」に関する章では、「透明感を保ちながら立体感を出したい」という相談が。これにさいとうさんは「『影=暗い色』という概念を捨てる」と回答している。

影=暗い色という概念を捨てる
もっと明るい違う色でもいいんだ、などと気づきを与えてくれる

「なるほどスミやグレーでシャドーを付けてきたけれど、もっと明るい違う色でもいいんだ」などと気づきを与えてくれる。どんな色でもいいのではなく、カラーサークルに基づいて考えるというコツも示す。このように、作者だけでなく、汎用性のあるアドバイスが詰まっている。

汎用性のあるアドバイス

 Chapter2は「演出を考える」章だ。「バズる絵が描きたい!」なんて正直でストレートな相談には、「見せたい部分以外は上手に隠そう」という答えが。

バズる絵が描きたい!
見せたい部分以外は上手に隠そう

 元のイラストを大胆にトリミングする、小物を使った演出で注目度をアップするなど、実践的なコツをわかりやすく解説している。

実践的なコツをわかりやすく解説

「構図」に関して悩んでいるなら、Chapter3が参考になるだろう。全体的な「ぎこちなさを解消したい」という相談には、「ざっくり大ラフで印象をやわらかくする」とアドバイスをおくる。

ぎこちなさを解消したい
ざっくり大ラフで印象をやわらかくする

 大ラフの描き方も実際の例をあげているので、すんなり理解できる。その上、さいとうさん自らポーズをとった写真も載っており、「実物を見て描くって大切なことだな」と改めて知ることができるだろう。

実物を見て描くって大切なこと

 そして巻末特集では、権利元協力の下、ホロライブプロダクション所属のVTuberを描いた二次制作作品への添削も行っている。
 推しキャラを描く際、押さえておきたいポイントについて詳しく回答。ディティールにこだわる、キャライメージを生かす背景の描き方など、すぐに取り入れられるコツが数多く載っている。

 また、添削にプラスして紹介するお役立ち情報も充実。さまざまなキャラクターに応用できる「かわいい顔の描き方」や、イラストを描き始める際の構図で迷ってしまう人に向けた「構図のメリットデメリット」なども大いに参考にしてほしい。

かわいい顔の描き方
構図のメリットデメリット

「もったいない!」というタイトルが示すように、さいとうさんの添削には温かい思いがあふれている。それぞれの作品にある「隠れたのびしろ」を見つけて、もっとこうすると上達するよ! と優しく背中を押してくれているようだ。

“この本を手に取ってくださった皆さんそれぞれが、自分らしい表現の形を見つけること。それが、ぼくがこの本に込めた願いです。”

 イラストの上達を目指すあなたにとって、本書は自分らしい表現を見つけるための第一歩となるかもしれない。

文=玉木成子

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