【最新巻レポ】『ONE PIECE 100』武の神髄、覇王色をまとうルフィとジョイボーイの名を口にするカイドウ、なおも戦況は絶望が色濃く…

マンガ

公開日:2021/9/7

※本記事にはネタバレが含まれます。ご了承の上お読みください。

『ONE-PIECE 100』(尾田栄一郎/集英社)

 1997年から『週刊少年ジャンプ』で連載が始まり、今作でついに大台の100巻を迎えた『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)。連載当時から学校で面白いと話題になり、教室では定期的にワンピース談議が華を咲かせていた。ウォーターセブン編や頂上戦争編のときは、週刊少年ジャンプウォッチャーが毎週のようにワンピース速報を教室に流し、今後の展開予想で議論が巻き起こった思い出がある。

 大学生や社会人になっても単行本を買い続けたファンは数多く、一時は一味離散でどうなるかと気を揉んでいたが、仲間と再会を果たして物語の後半となる新世界に突入。ドレスローザでドフラミンゴをぶっ飛ばし、ホールケーキアイランドで10億の四皇幹部との男の勝負を制し、ついにワノ国に上陸。打倒カイドウを掲げ、錦えもんを筆頭に侍たちと討ち入りを果たしたが、層の厚さと数の暴力で苦戦を強いられ、挙句の果てにビッグ・マムも参戦し、今まで以上にハラハラする展開が続く。

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 記念すべき100巻に到達したワンピースだが、今作『ONE PIECE 100』もルフィ一行の華々しい活躍というわけにはいかず、最後には戦いの第二幕を予感させられた。

 飛び六胞・ブラックマリアに捕まっていたサンジは、女性に手をあげない騎士道を貫いて、無様に殴られ続けていた。さすがにこのままでは何もできずノックアウト…。そこで「助けて!!! ロビンちゃーーーん!!!」と情けない叫び声をあげて、選手交代。ホールケーキアイランド編では、仲間を巻き込むまいと、自分ひとりですべてを背負ってお茶会に挑んだサンジ。しかし今回は飛び六胞を前に、仲間を頼った。その信頼をたしかに感じたのか、ロビンは「頼ってくれてありがとう♡ 嬉しかったわ」と口にしている。ちなみにロビンと一緒にやってきたブルックは、マリアの裸を目にしてちょっと嬉しそうだ。

 一方、ドクロドーム内ライブフロアでは、百獣海賊団と侍と麦わらの一味が入り乱れる大乱戦が起きていた。白ひげ海賊団の元1番隊隊長マルコは、大看板のキングとクイーンを相手に、不死鳥の圧倒的能力で引き留め続けていた。かつて世界最強の男の右腕だった貫録を感じる。しかし10億超えの2人は非常に頑丈で、さすがに疲弊してきた様子。そこを好機と見たのが、懸賞金7億でビッグ・マムの長男ペロスペローだった。

 カイドウとの戦闘でボロボロになって、城内で体を休めていた赤鞘九人男たちは、裏切り者の元同胞・カン十郎の卑怯な攻め手に遭い、ついに憎き将軍オロチと相まみえる。

 そしてドクロドームの頂上、四皇と“最悪の世代”の激突は、いったん決着がついてしまう事態に。四皇2人はどれだけ殴っても、斬っても、叩きつけても、体の内部を壊そうとも、ピンピンしている。ローの能力で四皇を海に突き落としたいが、力差がありすぎて動かすことさえできない。そこでキッドは考えた。

だったら…分解だ!!

 まずキッドがガラクタで檻のようなものを合成。ビッグ・マムの相棒ゼウスを、ローの能力で閉じ込めた。そしてゾロとキラーが、同じく相棒のプロメテウスとナポレオンの邪魔をして、マムをひとりぼっちに。もちろんマムは不敵に吠えた。

何だい!? あいつらを引き離せば
俺を倒せるとでも思ったのかァ!!?

 マムの拳がキッドもろとも地面にめり込む。キッドは顔中血まみれだ。だが、これこそ作戦だった。キッドがニヤリとしながら「反発(リぺル)」を発動。マムを空に飛ばして、ローの能力で大きな岩をマムにぶつけた。無論マムはノーダメだったが…大きな岩は空中を飛び続け、マムも空中で無防備に岩に押され続け、ドクロドームの頂上から落っこちてしまう!

 しまったと叫ぶマム。残念ながらプロメテウスの助けで海に落ちることはなかったが、キッドの好プレーで四皇を引き離すことができた。同じく打倒四皇を掲げるキッドは、キラーとともにビッグ・マムの首を狙って、ドクロドームを駆け下りていった。

 カイドウを相手にするのは、ルフィ、ゾロ、ローの3人。すかさずゾロが残りの力を振り絞って、カイドウに膝をつかせる渾身の一撃を放つ。さらにルフィは、96巻でロジャーと白ひげが見せた“覇王色をまとう”打撃の境地に到達する。かつて世界最強の男たちが見せた武の神髄を、カイドウとの死闘で開花させたのだ。

後はおれが…何があってもこいつに勝つから……!!!

 カイドウに相対する言葉に、わずかながら期待してしまう。ルフィはついに四皇さえ打ち破るかもしれない。いずれは海賊王になる男だから。しかし…やはり相手は四皇である。対戦後、カイドウは独り言のように、こうつぶやいた。

お前も…“ジョイボーイ”には……なれなかったか……!!

 子どもの頃からずっとワンピースファンの読者も、最近ワンピースを読み始めた読者も、100巻は手に汗を握るアツイ展開だ。絶対に読んで楽しい。ただ、四皇の壁はあまりにも高い。絶望が胸にじわりと広がる。

 それでも最後には、再び希望が差した。戦局がまたひとつ動きそうな予感がした。あの子どもが、いや、ワノ国の総大将が、しかと声を聞いていたからである。この意味が知りたければ、ぜひ本作を手に取ってほしい。子どもの頃から冒険を続けるルフィは、いま、海賊王になるための正念場を迎えている。

文=いのうえゆきひろ