“Thanks”“Congratulations!”にはなぜ“s”が付く? 「英語ができる人」だけが知っている英文法の秘密

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公開日:2021/9/18

話すための英文法ハック100
『話すための英文法ハック100』(肘井学/KADOKAWA)

「英文法やフレーズは中学や高校でしっかり勉強したはずなのに、いざ英語で話すとなると、正しく使いこなせない」という方は多いのではないでしょうか。

 それは、覚える際に文法のもつ意味や背景を理解していないことが原因かもしれません。『話すための英文法ハック100』(肘井学/KADOKAWA)では、英文法の持つ意味や背景をさまざまな観点から解説しています。

 ここでは、その中のひとつをご紹介しましょう。

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Thanks.やCongratulations.のsは3単現のsか複数形のsか?

 大学生のころ初めてイギリスに旅行をしたときに、現地で暮らしていた先輩がネイティブによく“Thanks.”と話していて、格好いいなあと真似して使っていたものです。“Thank you very much.”だけで十分伝わるのですが、やはり複数のパターンで言えると、便利ですよね。

“Thank you very much.”は多くの方が知っているフレーズかと思います。ただし、どのような文構造になっているか、説明できる人は多くないのではないでしょうか。

“Thank you very much.”の“Thank”が動詞で使われているのは間違いないでしょう。目的語に“you”を置いているので、主語の“I”が省略されているとわかります。

 では、“Thanks.”のsは3単現のsになるのでしょうか。その謎を解くために、“Thanks”が使われている表現をいくつか見ていきましょう。

例文①
Thanks for your help.
訳 助けてくれてありがとう。

例文②
Thanks a million.
訳 本当にありがとう。

 例文①、②ともに、目的語にあたる名詞が後ろに無いので、やはり動詞ではないことがわかります。すると3単現のsではないとわかるので、Thanksのsは複数形のsと類推することができます。よって、このThankは名詞で「感謝」の意味だとわかります。

 意味は分かったところでもうひとつ謎が浮かび上がります。

 なぜ“Thanks”と、“Thank”にsを付けて複数形にするのでしょうか。

強意の複数形

 実は、強意の複数形という用法があります。程度の大きさを示すために、通常は複数形にしない名詞を複数形にすることがあるのです。次の英文をご覧ください。

例文③
It is a thousand pities that you say that.
訳 あなたがそんなことを言うなんて大変遺憾だ。

 通常残念なことを表す際には、”It is a pity that ~.”「~は残念だ」という表現を使います。しかし、残念の程度が大きいことを示すために、書き言葉の世界では、a thousand pitiesとして「大変遺憾だ」と使うことがあります。

 そして、“Thanks.”も同様に、強意の複数形で、感謝の気持ちでいっぱいであることを伝えています。

 ここまでくれば、Congratulationsの謎も解けるでしょう。

例文④
Congratulations!
訳 おめでとう。

“Congratulations”のsは複数形のsで、強意の複数形というルールが適用できます。

“Congratulation”は「お祝いの気持ち」という意味の、目に見えないものを表す名詞ですが、複数形にすることで、祝福の気持ちでいっぱいであることを伝えています。

“Thank you very much.”のほかに、強意の複数形を使った“Thanks a lot.”や例文②の“Thanks a million.”を使えるようになると、ネイティブも微笑んでくれることでしょう。

文=肘井学

【著者プロフィール】
肘井学(ひじいがく)
慶應義塾大学文学部英米文学専攻卒業。全国のさまざまな予備校をへて、リクルートが主催するネット講義サービス「スタディサプリ」で教鞭をとり、高校生、受験生から英語を学びなおす社会人まで、圧倒的な満足度を誇る。特に「英文読解」の講座は年間25万人の生徒が受験する超人気講座となっている。

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