ゴミ屋敷の主、ネットストーカー、あおり運転の常習者…現代のスカッと漫画『合同会社・正義屋』

マンガ

公開日:2021/10/11

合同会社・正義屋
『合同会社・正義屋』1巻(著:西川秀明、監修:夏原武/白泉社)

 合同会社「正義屋」はヤクザである。しかし暴力団対策法にも相手にされない、構成員わずか6人の小さな組。そんな彼らのシノギは、いわゆる“無敵の人”を成敗すること。これは決して単純な勧善懲悪の物語ではない――。

 2021年8月27日(金)、『合同会社・正義屋』のコミックス第1巻が発売された。同作は『3月のライオン昭和異聞 灼熱の時代』で作画を担当していた漫画家・西川秀明の最新作。原作監修として、『クロサギ』の原案などでお馴染みの漫画原作者・夏原武も参加している。

 主人公・田須正義を中心に構成された合同会社「正義屋」。彼らの元には、正攻法では裁けぬ“胸糞”案件が日々舞い込んでくる。はじめは、ゴミ屋敷の主を何とかしてほしい…という依頼だった。近隣住民とトラブルを起こし、ゴミを宝物と称して家に積み上げていく一人の男。たとえ他人からはゴミに見えても、「私有財産」を主張されてしまうと中々手を出せない。

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 モラル、常識、調和、思いやり…。それらを捨て去った人々は、ある意味“無敵”の存在となってしまう。しかし「正義屋」は、そんな奴らを許さない。あくまでシノギとしてだが、彼らは様々な手段で“無敵の人”に鉄槌を下していく。

 他にも「正義屋」は、あおり運転の常習者、ネットストーカー、さらには上級国民を相手に大立ち回りを繰り広げる。いずれも近年のニュースを騒がせる厄介な人たちだ。作中でも彼ら無敵の人は、清々しいほどの悪人に描かれている。さんざん人に迷惑をかけてきた奴らに、キッチリと落とし前をつける「正義屋」。物語のラストでは、思わず心の中でガッツポーズをしてしまうかも。

 ただ冒頭でも触れたように、同作は単純な勧善懲悪の物語ではない。なんと「正義屋」に仕事を依頼しているのは、役所のトップや官庁の人間なのだ。ヤクザを使って厄介者を排除するという、正に“毒を以て毒を制す”仕組み。もちろん同作はフィクションだが、現実社会でも似たようなことが起こっているのではないか…と想像すると背筋がゾワリとする。そのため“怖いもの見たさ”で同作を手に取ってみるのもおススメだ。

 また上級国民が絡んだ回では、キャリア官僚の“闇”に鋭いメスを入れている。OB(先輩)と現役(後輩)の関係、官僚と関連業界団体の結束など、日本で長く続く独特の構造を指摘。アンダーグラウンドを歩いてきた原作監修・夏原らしいストーリー展開に、誰もが圧倒されるはず。ちなみにコミックスには、「裏社会マニュアル」と題した夏原のコラムも掲載。社会問題をはじめ、現代の日本の仕組みなどが分かりやすく解説されているので、こちらもぜひ読んでみてほしい。

 次に田須ら「正義屋」が手を下すのは、一体どんな悪人だろうか…。いつかは「正義屋」でも苦戦する圧倒的な“無敵の人”も登場するかもしれない。今後の『合同会社・正義屋』に注目したい。

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