怒涛の展開&人間ドラマに刮目せよ! 中国初BLファンタジー『魔道祖師』4刷決定の第2巻

文芸・カルチャー

公開日:2021/10/1

魔道祖師 1
『魔道祖師 2』(墨香銅臭/フロンティアワークス)

 アニメやラジオドラマ、実写ドラマのシリーズ再生回数は累計110億回超、アジアを熱狂させている中国発ブロマンスファンタジー『陳情令』。その原作となったBL小説『魔道祖師』は、日本に上陸するやいなや人気が沸騰し、1巻と同時に『魔道祖師 2』(墨香銅臭/フロンティアワークス)も4刷が決定している。

 舞台は古代中国──邪気を払う仙術が存在し、それを扱える者は羨望のまなざしを受ける世界。鬼道の開祖で「魔道祖師」と呼ばれた大悪党・魏無羨(ウェイ・ウーシエン)は、弟弟子に攻め入られたとも、みずから作り出した邪術の反動で八つ裂きにされたとも噂される、凄惨な最期を迎えた。しかし、それから13年の年月を経て、彼は思いがけない復活を果たす。術者の体を差し出し、悪鬼邪神を召喚する禁術「献舎」によって、魂だけが他人の肉体のうちに蘇ったのだ。

 魏無羨は、前世で人々に忌み嫌われた魂の正体を隠し、肉体を捧げた術者の望みを叶えるために、現世の自分が巻き込まれた怪異を解決しようと奔走する。だがその騒乱の最中、よりによって前世の自分と少年時代から文武を競い、幾度となく衝突してきた宿命の相手、藍忘機(ラン・ワンジー)と再会してしまった。

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 とはいえ、魂は旧知でも、現世の肉体は別人だ。魏無羨が認めなければ、藍忘機に自分の正体がばれるはずがない。そう高を括っていたのだが、藍忘機はどうしてか、魏無羨をそばに置こうとする。まさか怪異との戦い方を見ただけで、他人の肉体に宿る魂の正体に気がついたのか。魏無羨は訝りながらも、正体を明確には告げないまま、ふたりが巻き込まれた怪異の原因たるバラバラ死体の一部──凶悪な「左腕」の残りの部位を追う。

 その道中、魏無羨は、藍忘機の変貌ぶりに驚愕させられっぱなしだった。前世では、生真面目で潔癖、魏無羨が酒でも飲もうものなら手を出してきた藍忘機は、現世の自分にしたい放題させている上に、酒にまでつき合おうとする。彼の変化を居心地よく感じつつ、魏無羨自身も不思議な思いを抱えていた。藍忘機はこんなにも無愛想な男なのに、なぜいつも自分を楽しませることができるのか。彼の瞳に見つめられると、なぜ面映い感情が芽生えてくるのか。そんな中、ふたりが回収していた「左腕」の残りの部位からは、重大な真実が暴き出されようとしていて……?

 第1巻で描かれた圧倒的なスケールの世界観をベースに、第2巻では魏無羨と藍忘機の関係が深まっていくことはもちろん、いっそう深い人間ドラマが描かれる。主役のふたりだけでなく、周囲を固める魅力的なキャラクターたちの生き様からは、運命に翻弄される人間の儚さと、それでも逆境に抗う強さとを、痛烈に読み取ることができるだろう。

 前世と現世を行き来しながら、物語はいよいよ取り返しのつかない事態へと発展してゆく。重厚な舞台設定にふさわしく綴られる怒涛の展開と人間模様を、存分に味わっていただきたい。

文=三田ゆき

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