衝撃のラストに子どもが大喜び! 人体をジェットコースターが猛スピードで駆け抜ける爽快絵本

文芸・カルチャー

公開日:2021/9/25

『人体ジェットコースター』(中垣ゆたか:著、奈良信雄:監修/ポプラ社)

 年長から小学校低学年は、子どもたちが自分の身体の仕組みにだんだん興味を持ち始める時期。堅苦しくなく、子どもと一緒に楽しみながら人体について学ぶのにうってつけな絵本が『人体ジェットコースター』(中垣ゆたか:著、奈良信雄:監修/ポプラ社)だ。0歳時点ですでに書評書評インタビューデビューを果たしている我が家の娘(現在6歳)にも本書を読み聞かせて一緒にレビューをお願いした。

擬音と迫力の絵柄はさながら“読むアトラクション”

人体ジェットコースター

 人体のことを描いた絵本は数々あるが、本書のストーリーは、タイトルの通り、人体をジェットコースターに乗って駆け抜けていくというもの。見開きで縦に進んでいくのだが、絵の迫力と疾走感がまさにジェットコースターに乗っているかのよう。「カタカタカタカタカタカタカタ……」と口の中に入っていくときのドキドキ感や、「ぎゅうううううーん」と擬音つきで旋回していくさまが、まるで読むアトラクションのようで楽しい。

人体ジェットコースター

人体ジェットコースター

 それぞれの器官については、短い解説文とキャラクターのセリフで説明がつけられている。順天堂大学客員教授で医学博士の奈良信雄氏が監修しており、基礎的な人体の機能や知識はきちんと押さえられている印象だ。

advertisement

 作者の中垣ゆたか氏は、『にんじゃなんにんじゃ』(赤ちゃんとママ社)、『ぎょうれつ』(‎偕成社)など、細かい描き込みが特徴に挙げられる絵本作家兼イラストレーターだ。本書の『人体ジェットコースター』もご多分にもれず、勢いよく身体の中を通り過ぎていくジェットコースターの内外で、たくさんのキャラクターが楽しげにうごめいている。

小学1年生お気に入りの衝撃のラストを体感せよ!

 さて、小学1年生となった我が娘に、さっそく本書を読み聞かせてみた。近頃、「なんで?」がまた口癖となった娘(子どもは定期的に「なんで?」ブームがくる)だが、知的好奇心が盛り上がっている時期なのだろう。本書を読み聞かせるにはかなりいいタイミングなのではないだろうか。

人体ジェットコースター

 ジェットコースターが口から食道を通り、胃に向かうところでは、娘ののどからお腹を指で触って示しながら読んだ。そうして読みすすめるうちに、本人も「心臓はここ?」「肝臓ってこのあたり?」と絵本に出てくる器官が自分の身体のどの場所にあるのか具体的にイメージするようになったようだ。

 前述の通りそれぞれのページには色々な細かい描き込みがあるのだが、自分で読んだときには気づかなかったところに子どもが気づいたり、お話の読み聞かせと違い、会話しながら楽しめたりするところが本書の大きな特徴かもしれない。「白血球ってばい菌と戦うやんな!」と絵を見ながら本人が知っている人体の知識と照らし合わせて話す姿に、子どもの成長を感じられて非常に良かった。また、なぜか子どものツボに入る絵がところどころにあるらしく、クスクスと笑いながら絵を眺めて喜んでいることもあった。

 そして小1の娘が最も気に入った場面がある。それは最後のシーンだ。人体を巡っていった最後に行き着く先は、皆さんあらかた予想はつくだろうが、疾走感と爽快感がそのまま活きたラストになっている。子どもは大喜びで、わたし自身も思わず笑ったのだが、不思議なすがすがしさが読後に残った。これは実際に本書を読んで体感してほしいところ。

 本書は、文章はかなり少なめなので、しっかり人体について勉強するというものではないが、子どもが人体や生命の不思議に興味を持つとっかかりとしては非常に楽しい一冊だ。読み聞かせで子どもと一緒に会話をしながら、大人もあらためて身体や健康のことを考えるきっかけになるのではないだろうか。

文=本宮丈子

あわせて読みたい