手軽な自己啓発本ではないが、堅苦しい宗教本でもない “生き方指南書”
公開日:2012/9/20
苦しみはどこから生まれるのか?
ハード : PC/iPhone/iPad/Android | 発売元 : KADOKAWA / 角川書店 |
ジャンル:趣味・実用・カルチャー | 購入元:BOOK☆WALKER |
著者名:池口恵観 | 価格:756円 |
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タイトルこそ『苦しみはどこから生まれるのか?』だが、決して論文くさい本ではない。現代人の苦しみの発生源について分析したり、それについて宗教家の立場でコメントしたりという構成でもない。じゃあ、どういう本なのか? ずばり、“法話”というくくりが一番しっくりくるのではないだろうか。一節ずつが、ひとつの法話になっている。疲れたら読み飛ばしても、また受け入れてもらえる本。連続性はないのかもしれないが、一貫性はある。そんな本です。
ただし、法話を聞いているような本だけど、宗教本ではない。なんでそんな解釈が成り立つのかというと、やっぱり仏教の特殊性だと思うんです。日本に伝わった大乗仏教はもちろん、最近なぜかよく見かける上座部仏教(テーラワーダってやつです)なんかの本でもこれは感じることなんですが、とにかく“教えを説く”というスタンスではなく“手段を伝える”っていう感じがするんですよね。
最終的には仏教の教え(本書の場合だと弘法大師の言葉になるわけですが)に行き着くんだけど、空海の人生について語るわけではない。著者自身の体験やこれまでの経験で、どんな場面で苦労があって、そのときに“行”がいかに有効だったかについて書いてあるんですね。そういう意味で、思いっきり俗っぽい言い方をするならば「俺、すっげー大変だったけど、こんな手を使ったら乗り切れたよ!」となるのでしょうか。
無宗教な人がほとんどといいつつ、コンビニに行けばビジネス書もどきの“生き方本”が並んでいるところをみると、歴史に根ざした“本物の生き方指南書”ともいえるこういう本はもっと読まれてもいいな、と思うのです。
前半では特に、著者御本人の苦労とその克服の過程が語られます
この護摩行も再三登場するが、相当な苦行なんだろうな。ちなみに護摩行は密教にしかないです
この本の要約ともいうべきページです。まさに“生きにくいなら、この手を使え!”ってことでしょう
別に仏教じゃなくてもいい、と言い切ってしまうところが仏教の特殊性だと思うのですが…
欲は捨てるものじゃなくて、バランスをとってつきあっていくものだそう