新作、大御所、懐かし作品から厳選した『機動戦士ガンダム』ギャグコミック3選! 君は笑って刻の涙を見る…

マンガ

更新日:2021/10/6

 1979年から展開してきた「機動戦士ガンダム」シリーズは、今や映像作品はもちろん、マンガも数えきれないほどの作品が発表されている。おもに戦争をテーマにしたシリアスで複雑な内容の「ガンダム」だが、思いっきり肩の力を抜いて楽しめるギャグマンガも存在していることをご存じだろうか? そんな老若男女を問わず、そして根っからのガンダムファンにも受け入れられているガンダムコミックスの、新作、大御所、懐かし作品から厳選した3タイトルを紹介!

【新作】ZZのラスボスがOLに? 『アラサーOLハマーン様』

アラサーOLハマーン様
『アラサーOLハマーン様』(いわさきまさかず:漫画、矢立肇・富野由悠季:原案/KADOKAWA)

作品内容

 ハマーン・カーンは“様”をつけて呼びたくなる……。アパレル系メーカーである株式会社ネオ・ジオンに勤めるOLで広報部のハマーン課長(30)は、その手腕と美貌で周囲から賞賛と憧れを一身に集めていた。完全無欠と思われているが実は家事は一切できず、ストレスから自宅でお菓子をドカ食いし、あまつさえビール(ロング缶)を一晩で1パック(6本)以上空けてしまうという一面も。さらにモフモフぬいぐるみの「もちきゅべ」(もちもちなキュベレイ)がひそかに大好きというかわいい一面もある、愛すべきポンコツ乙女なのだ。そしてちょっかいをかけてくる元カレのシャア・アズナブル本部長と、年下コンビニ店員のジュドー・アーシタ君の間で恋心が揺れる日々……。ハマーン様の明日はどうなる? 2020年から『ガンダムエース』(KADOKAWA)で連載を開始。

笑いどころはココ!

 30歳のおひとりさまOLの日常を描く本作は、言ってみれば、『機動戦士ガンダムZZ』『機動戦士Zガンダム』の登場キャラクターたちの異世界転移ものでもある。OLハマーン様の部下には従順なマシュマー・セロや、酒焼け声のセクシーOLのキャラ・スーンがおり、ミネバ・ラオ・ザビはハマーンを「姉」と慕う遠い親戚の女子高校生という設定だ。さらにプルとプルツーも登場し……。

 また、ハマーン様がつぶやくセリフの数々は、笑えると共に誰もが声優・榊原良子さんの声で脳内再生してしまうことだろう。さらに細かすぎる脇役も登場し、ついついクスっとさせられてしまう。作者・いわさきまさかず氏のダブルゼータ愛の凝縮っぷりに注目!

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【大御所】連載20年を超えた大河ギャグ作品! 『機動戦士ガンダムさん』

機動戦士ガンダムさん
『機動戦士ガンダムさん』(大和田秀樹:漫画、矢立肇・富野由悠季:原案/KADOKAWA)

作品内容

『機動戦士ガンダム』の名場面をパロディ化した4コマ漫画。アムロは“思春期まっさかり”の能天気&天然ボーイで、ニュータイプ能力を不純な目的で使用。シャアは「カッコ悪い」という言葉に過剰に反応し、裸踊りが好きで泣き虫で、なぜかアッガイが好き。そしてララァはシャアのどんなボケでも拾い、冷ややかに厳しくツッコミを入れる。そんなアニメとは全く異なるキャラ設定だけでも笑えてしまう。

 なお4コマ漫画以外にもサブストーリーとして「女医セイラ」「大隊長ザクさん」「ガンダム転生」などの物語も展開し、アニメ化もされた大御所作品なのである。『ガンダムエース』(KADOKAWA)2001年創刊号から、2021年現在も連載が続き、“世界一の長期連載ガンダムコミック”として記録を更新し続けている。

笑いどころはココ!

 ドタバタ、下ネタ、シュールと何でもアリの展開。そしてサブストーリーの「女医セイラ」は、思春期のアムロからホワイトベースのコック・タムラ、モブ級ジオン兵・ジェイキューまで、幅広くそして“しょうもない相談”にのっていく。「大隊長ザクさん」はモビルスーツが擬人化され、ザクが場末のスナックのママ・ザクレロ姐さんと“いい仲”になり、子を成すという、もうどうかしているとしかいえない展開がたまらない。そして昭和21年の広島の極道が「ほぼ異世界の未来」にアムロとして生まれ変わる「ガンダム転生」を読んだときには、本作の底はまだまだ見えないと思った……。

【懐かし作品】これがガンダムファンのリアル!? 『濃爆おたく先生』

濃爆おたく先生
『濃爆おたく先生』(徳光康之/講談社)

作品内容

 1999年から2002年に『月刊マガジンZ』(講談社)で連載された本作。ガンダムおたくで、女性キャラのシーマ・ガラハウとモビルスーツのドムが好きな教師「暴尾亜空」(あばおあくう)がある学校に転任してくるところから物語は始まる。しかし生徒たちは社会現象となったガンプラブームすら知らない世代……。あきらめない彼はガンダム妄想小話を語り、生徒たちの心をつかむことに成功する。暴尾は妄想でも他人の心を揺り動かせる“本物のおたく”であった。そして暴尾のまわりには、彼と同じガンダムおたくや、コスプレ好き、アニメ好き、SF好きなど、何かにとりつかれたちょっと変わった人たちが集まってくる。かくしてアツい妄想話をぶつけ合うトークバトルが始まるのだ。

笑いどころはココ!

 前述の『アラサーOLハマーン様』と『機動戦士ガンダムさん』はガンダム本編のパロディだが、本作はガンダムファンの情熱を笑いに昇華したもの。自分の好きなジャンルを“圧倒的な”私見で語り叫びまくるこの作風はファンならずとも笑えるはず。ガンダム妄想小話での勝負と、そこで繰り出されるアツい名言が魅力だろう。もちろん細かすぎるガンダムネタもこれでもかと詰め込まれており、分かれば分かるだけ笑えてしまうのは間違いない。

 また暴尾の名言「知識を語るな、愛を語れ」「妄想は現実逃避ではない、現実離陸、それが人の心を打つ」などはTwitterで一度は見たことがあるかもしれない。それらは時代を超えて、今現在もネット上で多くのガンダムファンたちの心を震わせ続けているので、興味があれば確かめてみてほしい。読み終えたときに涙が流れたら、それは笑い過ぎか、はたまた感動か……。

 冒頭でも述べた通り、シリアスかつ複雑な内容の「機動戦士ガンダム」だが、紹介した3作品は、いずれも軽い気持ちで読め、理屈抜きで笑えるものばかり。知らない人も、知っている人も、ガンダムに対するイメージが良い意味で変わるかもしれない。構えることなく手に取っていただきたい。

(C)創通・サンライズ

文=古林恭

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