すべては5匹の猫たちのために……! 猫マスターが建てたスゴすぎる家

暮らし

更新日:2021/10/7

下僕の恩返し
『下僕の恩返し』(響介/ビジネス社)

 冒頭から自分語りになってしまい恐縮だが、筆者はこれまでトータルで15年ほど猫と暮らしている。そのあいくるしさと気品漂う眼差し、そして人間たちを翻弄する気まぐれさに惹かれ、今では猫がいなかった頃の生活を思い出せなくなってしまった。猫がこの世に存在する事実に感謝をしながら、今日もお世話をさせていただいている身だ。まさに猫様の「下僕」。そんなふうに感じている猫好きは多いのではないだろうか。

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『下僕の恩返し』(ビジネス社)の著者・響介さんもまた、猫に魅せられた下僕のひとりだ。作曲で生計を立てながら、本業は“猫マスター”を自称する彼は5匹の猫たちと暮らしている。14.1万人のフォロワーを擁する響介さんのツイッターアカウントには、連日かわいすぎる猫たちの写真や動画が投稿され、我々猫好きに癒やしを与えてくれる。

 響介さんは20代前半まで「音楽で食えたらラッキー」と思いながら、仕事では芽が出ず、毎日ゲーム三昧で深夜にラーメンを食べて寝るという怠惰な日々を送っていた。しかし、そんな彼の生活は保護猫、リュックを引き取った日から一変する。

「猫たちと暮らすことで『命』を預かることの重さを実感し、仕事や人生への向き合い方が180度変わった。

「音楽で食べていきたい」からじゃない。「音楽しかできない僕は、猫たちを幸せにするための唯一の手段として、音楽を“仕事”として、頑張らなければいけないんだ」、そう自分に言い聞かせた。」(はじめにより)

 猫たちのために一念発起した彼は、がむしゃらに仕事をして自堕落な生活から脱却。某国民的アイドルへの楽曲提供をきっかけに、一気に仕事が軌道に乗ったという。“すべて猫たちがくれた幸せパワーのおかげ”と感じている響介さんは、日頃の感謝を込めて、猫たちが走り回れない狭いアパートから“100平米超のマンション”を購入して転居。新たな生活をスタートさせた。

下僕の恩返し
狭いながらも楽しいワンルーム時代

下僕の恩返し

 マンションに引っ越した当日は「猫たちに恩返しできたぜ!」と感慨に耽っていたのもつかの間。彼は自分が猫たちにもらった幸せの1%も返せていない、と考えを改め、その翌日には5匹がより楽しく快適に過ごせる一軒家を作るためのマイホーム計画を立てはじめた。同書は、そんな響介さんの「猫と音楽家が暮らす理想のお家」が建つまでの軌跡を記した戦いの記録である。

下僕の恩返し

下僕の恩返し
購入したマンションも猫ファースト仕様に。

下僕の恩返し
マンション時代のリビング。

 しかし、彼のアツい情熱とゆずれないこだわりは、発注した住宅メーカー「フミフミホームズ(仮名)」の担当者を度々困惑させる。ちなみに、響介さんの「理想のお家の絶対条件」は以下だ。

①スケルトン(鉄骨)階段:猫の運動不足解消のため。スケルトンなのは上からも下からも横からも猫を見たいという響介さんの願望。

②とにかく大きい窓:全員(響介さん含む)がストレスなく日向ぼっこができる。

③壁には猫が遊べるグッズを無数に(目指せMYZOO):既存の家にも取り入れやすい猫グッズを設置したい。

④おしゃれな空間としてのイメージは崩したくない:猫のために設計はするが、人間が見てもかっこいい空間にしたい。

⑤できれば3階建て:3階から1階までを鬼ごっこのステージにしたい。

⑥家で完璧にお仕事できるよう音楽スタジオ完備:完全防音の部屋を完備して猫にバレずに作業したい。

⑦やたら光らせたい:猫をよりかわいく撮影するため、家をとにかくかっこよくするために間接照明をたくさん設置。

⑧スーパー広々LDK:猫たちと一緒に走り回りたいので最低30畳以上必要!

 無論、こだわりは上記だけにとどまらず、実際に図面の打ち合わせやインテリアの選定でも響介さんは一歩も引かない。そんな彼の気迫に押され「フミフミホームズ(仮名」)」も、社内のアベンジャーズを揃えて響介邸の建設に当たった。

下僕の恩返し
数多の苦難を乗り越えて完成した響介邸。

下僕の恩返し
左からピーボ(♀)、ソラ(♀)、ニック(♀)、リュック(♂)、ポポロン(♂)

 しかし、長く熱い準備期間を経て着工したにもかかわらず、後に響介さんが涙するほどの大きなトラブルが発生する。猫マスターのいい意味でヤバいこだわりも見ものだが『下僕の恩返し』を読むと“家を一軒建てる”こと、それ自体がドラマチックなイベントなのだと気づかされる。

下僕の恩返し
猫たちの紹介ページも愛にあふれている。

下僕の恩返し

 もちろん、響介さんと暮らしてくださっている5匹の猫たちのサービスショットも満載。そのほか、猫ファーストな部屋づくりのコツなどすでに猫様と暮らしている下僕たちの参考になる情報も載っているので、猫好きは一読の価値ありだ。

文=とみたまゆり

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