「落語」は「音楽を聴くような感覚」で楽しむべし!? 難しそうなイメージを一変させる、落語初心者にオススメの1冊

文芸・カルチャー

更新日:2021/10/12

家で過ごす時間が増えた昨今。以前からの趣味や外で友人や仲間と集まって何かする、というのもなかなか難しい……なんて人も多いのではないでしょうか。そんなあなたは、1人でも楽しめる、外で密にならない、家の中でもできる! そんな魅力的な趣味やエンタメを本から見つけてみては?
それには何かを楽しんでいるマニアな先達から魅力を聞くのが一番、ということで、編集部おすすめの“マニア本”を特集でお届けします!

山田全自動の落語でござる
『山田全自動の落語でござる』(山田全自動/辰巳出版)

 日本には多くの古典芸能があるが、たとえば「歌舞伎」や「文楽」などと聞けば、ちょっと格調高く感じてしまうのはやむを得ないのかもしれない。「落語」にも同様のことはいえそうだが、そういった見方に対して「待った!」をかけんとする書籍がある。『山田全自動の落語でござる』(山田全自動/辰巳出版)は、落語がいかに気軽に楽しめる芸能であるかを、分かりやすく漫画で教えてくれる。

 そもそも落語がどんなものかといえば、江戸時代に成立したとされる「話芸」のこと。「落語家」あるいは「噺家」と呼ばれる人が、聴衆に対してさまざまな物語を語り聞かせるのである。伝統芸能なのだから、さぞかし堅苦しい話なのだろうと思う向きもあるかもしれないが、そういうものでは決してない。本書の著者である山田全自動氏は、落語に対してとても面白い提言をしているので、本稿で紹介してみよう。

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落語は音楽を聴くような感覚で気軽に楽しもう!

 落語は物語を語り聞かせる芸能だと先述したが、ならば物語の概要は一切知らずに聴いたほうがよいのだろうか。答えは「否」であり、著者は「落語はオチを知ってても楽しい」と断言する。それは音楽ライブで多くの人が知っている曲が演奏されると盛り上がることと同様に、むしろ物語を知っていたほうが落語を楽しめるという。噺家たちのCDも数多く発売されているので、音楽を聴くような感覚で落語をイヤホン等で流してみると面白いだろう。

落語は内容を知っていたほうが楽しめる!

 通常、ストーリーのネタバレはご法度だと思うが、実は落語に関しては、著者いわく「むしろどんどんネタバレしろ」という。なぜなら落語は「どういうオチになるのかだけを楽しむものではない」から。物語に対する噺家の解釈の違いだったり、演じかたの違いだったりと物語の途中途中でいろいろな楽しさが存在するのが落語なのだ。そのため本書は、落語の有名な「演目」を理解しやすい漫画にして紹介してくれる。では、どんな物語があるのか見てみよう。

「寿限無」(じゅげむ)

 この話は子どもが生まれて名前を付ける際、縁起がいい言葉をたくさん繋げて命名してしまうという筋立て。最大のポイントは「寿限無」から始まる名前が、やたらと長いことだ。その名を噺家が連呼するさまが、面白みなのだろう。ちなみに著者は「寿限無」の名を覚えようとしてムリだったとか。でも実は「寿限無」はアイドルグループ「ももいろクローバーZ」の歌にも登場するので、覚えているという人は案外と多いかもしれない。

 もし落語を難しそうだと思っている人は、本書を一読いただければそのイメージは一変するだろう。さらに『仮面ライダーリバイス』には落語家の林家木久扇師匠がゲスト出演するなど、落語は意外と身近に存在しているのだ。もし少しでも興味があるのなら、本書のいうように「音楽を聴くような感覚」で触れてみるのをオススメしたい。

文=木谷誠

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