ゾンビ×ラブコメ!? ゾンビに囲まれたショッピングセンターで繰り広げられる男女6人の恋愛戦!

マンガ

公開日:2021/10/11

生き残った6人によると
『生き残った6人によると』(山本和音/KADOKAWA)

 今や、エンタメの一大ジャンルとなったゾンビもの。突如、町がゾンビだらけとなり、噛まれると自分もゾンビに。そこで生き残った人間同士がゾンビを倒すため結託。ショッピングモールなどに逃げ込んで立てこもるが、人間同士の争いが発生して……というのがお約束な展開だ。

『生き残った6人によると』(山本和音/KADOKAWA)は、そんなゾンビというジャンルに“ラブコメ”要素が加わった異色な作品。成田空港に到着した航空機内でゾンビ感染が発生し、瞬く間に拡大してしまう。ゾンビが町にあふれ、6人の男女が千葉・幕張のショッピングモールに逃げ込み、そこで共同生活を送るようになり、さまざまな恋愛模様を繰り広げるというのが本作のストーリー。

 気になる人にアプローチしたり、恋愛テクニックを披露したり、あるいはその様子を傍観して楽しんだり。ゾンビあふれる不穏な空間で、恋愛バラエティのような展開が繰り広げられる。そんな不思議な世界観が最大の魅力。本稿ではもう少し踏み込み、独断と偏見で本作の3つの魅力を紹介したい。

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①クセの強いキャラクターたち

 本作の主要な登場人物は6人。男性は自信家でナルシストな登山家・平坂亮(23)、ビジネス用語を普段使いする意識高い系の会社経営者・れんれん(25)、謎の言動が多いフリーター・入江神(19)。

 女性陣は、落ち着きのあるお姉さんタイプの菜食主義者・村濱雫(25)、性格も髪色も明るいYouTuber・樫本ビースト(20)、そして本作の主人公で実直・誠実・勤勉を体現したような高校生でソフトボール部員の水上梨々(17)。

 クセの強いメンバーたちの中で梨々は一見普通。しかし、その生い立ちに大きな爆弾を抱えており、彼女の人格形成に関係している。ちなみソフトボール部という設定を活かし、バット一本でゾンビをなぎ倒す、メンバー随一の武闘派だ。そう、本作にはいわゆる“普通”の人物はいない。

 ほかの登場人物も、その表情や言動から何かを隠していることがわかる。本作はその表情描写が実に細かい。彼らがどんな秘密や過去を持っているのか。ストーリーが進むごとにわかってくるだろう。そんなキャラたちの背景が深掘りされていく展開も魅力の一つだ。

②独特な“ゆるさ”と“緊張”

 突如現れた感染者と相対したとき「気になるあの子に良いところを見せたい」とゾンビ討伐を買って出る。

 ショッピングモール内を2人1組で探索。「あの子と一緒になりたい」と組み合わせを決めるために揉める。

 賑やかであり、ゆるくもある恋愛模様。かと思えば、ゾンビの襲来やキャラクターの秘密に迫る謎の行動、事態の急変など、緊張感あふれるシリアスな展開になることも。

 この高低差があるから、シリアスな展開によりいっそうの緊張感を与えてくれるし、日常パートではいっそうニヤニヤほっこりとなり、気づけば「次はどうなる?」とページをめくる手が止まらなくなっている。

③息詰まるゾンビとの闘い

 やはりゾンビとの闘いも魅力の一つだろう。特に1巻の最後では、とある出来事がきっかけで主人公が大量のゾンビとの大立ち回りを見せてくれる。この戦闘シーンは、もはやバトルもの。比較的、身体能力が高いソフトボール部の女子高生とはいえ、少年漫画で活躍してもおかしくないほどの強さを誇る。

 そして、この闘いは、なんとも気になる形でフィニッシュする。

 主人公の運命は?
 登場人物たちの本性は?
 彼らは逃げきることができるのか?
 そして、誰と誰がくっつくのか?

 続きを読むまで死ねないし、ゾンビになることもできない。2巻の発売まで座して待ちたい。

文=冴島友貴

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