相続トラブルが起きる所に探偵あり!? 相続の裏にある陰謀や矛盾を解き明かす、ニューヒーローが登場

マンガ

更新日:2021/10/14

相続探偵
『相続探偵』(幾田羊:漫画、西荻弓絵:原作/講談社)

 火曜サスペンス劇場や木曜ミステリーで、犯罪の火種としてよく使われる相続トラブル。正直、学生時代は「こんなドロドロ劇、現実じゃ滅多にないだろう」と思っていたが、そうでもないらしい……。相続に関する相談件数は年々増えていて、いまもなおトラブルの火種を生んでいるようなのだ。

 そんな相続トラブルをテーマにしたミステリー漫画がある。タイトルは『相続探偵』(幾田羊:漫画、西荻弓絵:原作/講談社)だ。主人公の灰江七生(ハイエナオ)は、相続トラブル専門の探偵。陰謀と策略で複雑化した相続トラブルも、彼がスパッと解決していく。

 ある日、世界的に有名なミステリー作家・今畠忍三郎が亡くなった。多くの芸能人や著名人が通夜に参列する中、灰江も忍三郎のワイン仲間として弔問していた。通夜も終わりに近づいてきたころ、灰江は忍三郎の娘3人と秘書の桜庭が言い争う場面を目撃する。言い争いの火種はもちろん、相続に関することだ。有名なミステリー作家ともなれば、莫大な財産が残されているはず。少しでも相続したいと考えるのが普通だろう。

advertisement

 そんなトラブルにピリオドを打ったのは、秘書の桜庭だ。彼は忍三郎から相続について語った録画ビデオを預かっていたのだ。そこに映るのは「3人の娘には遺産は相続させない、すべて秘書の桜庭に相続させる」と語る、忍三郎の姿。

 突然の遺言にひどく動揺する3人。「なぜ桜庭にすべて相続させるのか?」「桜庭の仕組んだ罠だ!」「そもそもお前に遺産を相続する権利などない!」など、さまざまな罵詈雑言が会場で飛び交う。その場に居合わせた灰江にも飛び火するが、彼は録画ビデオを見終わるとすぐに「明日の葬儀でお会いしましょう」と言い残し、去ってしまう。

 翌朝、葬儀の場へと足を運ぶ灰江。彼は亡き忍三郎に向けてこう告げるのだった。

「今畠先生、あんたの遺産は泣かせねーぜ」

 この言葉の意味はいったい……? 灰江は何か異変に気付いたのだろうか。物語はここから、予想もつかない展開を見せる。

 本作の魅力を一言で表すと“爽快感”だ。特に陰謀をはかった相手に対する、灰江の歯に衣着せない言葉の数々は、僕らを爽快な気分にさせてくれる。作中では、彼がコーヒー豆をそのまま口に頬張り「ガリッ!」と噛む瞬間が描かれるが、その瞬間こそ、爽快な気分になれる時間の始まり。要注目だ!

 また相続に関する知識がなくても気軽に読めるのも、本作のもう1つの魅力だ。作中に難しい法律が出てきても、わかりやすく解説が加えられている。躓くことなくスラスラと読み進められるだろう。さらに巻末には「遺言書作成の流れ」や「遺言書の正しい書き方」といった、相続に関する知識が紹介されている。漫画を楽しみつつ、学びも深められるのだ。

 おそらく、相続をメインテーマにした漫画は他にないだろう。爽快感に浸りながら相続に関して詳しくなれる本作を、一度読んでいただきたい。

文=トヤカン

あわせて読みたい