これぞマンガ版オーディション番組! 銭湯に生まれた少女・ひかるは、一大オーディションを勝ち抜けるのか

マンガ

公開日:2021/10/13

ひかるイン・ザ・ライト
『ひかるイン・ザ・ライト』(松田舞/双葉社)

 ここ最近、アイドルを目指す若者たちに密着した「オーディション番組」が人気だ。SNSを見ていてもそれぞれの“推し”に対する愛情あふれる投稿が盛んで、“推し”が脱落しようものなら落胆の声も聞こえてくる。そして、見事デビューを勝ち取り、夢を叶えた人たちに寄せられるのは称賛と応援だ。ぼくは各番組を隈なくチェックしていたわけではないが、それでも夢を追いかけ努力を重ねる人たちの姿に感動を覚える瞬間が多々あった。それどころか、「自分も頑張ろう」と明日への活力すらもらえる気がしたのが不思議だ。

『ひかるイン・ザ・ライト』(松田舞/双葉社)は、そんなオーディション番組のマンガ版と言えるだろう。

 主人公・荻野ひかるはうたうことが大好きな中学3年生。実家は銭湯を営んでおり、掃除を手伝いながらも大きな声で歌をうたう。その歌声の素晴らしさは近所でも評判であり、ひかるにとって掃除用のモップがマイク、洗い場がステージなのだ。

advertisement

ひかるイン・ザ・ライト

 そんなひかるには、現役のアイドルとして活動している年上の幼馴染・西川蘭がいた。大所帯のグループに所属しているため埋もれ気味だったが、それでもひかるは蘭のことを応援し、眩しく見つめていた。

 それは突然のことだった。いつものように蘭が出演する音楽番組を観ていると、世界的プロデューサーによる一大オーディション「ガールズ・イン・ザ・ライト」が開催されることが発表されたのだ。

さあ本物のアイドルになりましょう
私は待っています
特別なあなたが参加してくれることを

 そして直後に発表されたのが、蘭のグループ脱退報道だった。一体どうして……? 不思議に思うひかるのもとに現れた蘭は告げる。

アイドルはやめないよ
私「ガールズ・イン・ザ・ライト」ってオーディション受けるんだ

 そう、蘭はいまいる場所を捨てて、注目度の高いオーディションに人生を懸けようとしていたのである。そして、蘭は「一緒にオーディションを受けよう」とひかるを誘う。

ひかるイン・ザ・ライト

 その言葉に戸惑うひかる。オーディションを受けるということは、他者から評価されてしまうということだ。それはとても怖い。単純に好きな「うたうこと」にも評価が下され、その結果によっては好きな気持ちが押し潰されてしまうことだってありうるだろう。それでも、ひかるは気付いてしまう。自分も、アイドルになりたいのだと――。

ひかるイン・ザ・ライト

 そこから本作では、ひかるがオーディションを勝ち抜いていくさまが描かれていく。とはいえ、ひかるは特別なレッスンを受けてきたわけではない。ただ、銭湯の中でうたっていただけなのだ。つまり、ひかるはまだ磨かれてもいない原石である。それを審査員たちはどのように評価していくのか。課題をこなすひかるに対して評価が下されるシーンは、まるでオーディション番組を観ているときのように手に汗握るだろう。同時に、ひかるが一次審査、二次審査を勝ち抜くたびに訪れるのは、感動だ。それはひかるの内面が詳細に描き込まれているから。ひかるがどんな想いでオーディションに挑んでいるのかが読み手に伝わってくるからこそ、勝利したときの感動も大きいのだ。

 結果としてひかるは、1万人のオーディション参加者から絞り込まれた40人のアイドル候補生に選ばれる。もちろん、順調に勝ち上がった蘭も一緒だ。しかし、その場に集まったのは元アイドルやインスタグラマー、クリエイターなど、すでに知名度も人気もある実力者ばかり。ひかると蘭は強敵との戦いに勝利することができるのか。第1巻は今後の戦いがさらに白熱していく予感を残したまま、ラストを迎える。

 本作を読み終えて感じたのは、夢を追いかける若い子たちの尊さだ。ときに自信を失いそうになりながらも、決して諦めない。口にするのは簡単だが、それを実行するのはとても難しい。妥協しながら生きてきた自分が恥ずかしくもなる。だからこそ、ひかるや蘭のことが応援したくなるのかもしれない。

 第2巻からは審査もより厳しいものになっていくだろうし、ライバルとの関係も激化していくだろう。全員がハッピー、ではいられないのだ。誰かが笑う陰には、必ず泣いている人がいる。それがオーディションである。そんな残酷さをも内包しながら、本作がどう描かれていくのか。それを追いかけていきたいと思う。

文=五十嵐 大

(C)松田舞/双葉社

あわせて読みたい

この記事で紹介した書籍ほか