こんな風に溺愛されたい! 「鬼の花嫁」に選ばれた女の子の胸キュンあやかしファンタジー

文芸・カルチャー

公開日:2021/10/14

鬼の花嫁
『鬼の花嫁』(クレハ/スターツ出版)

 運命的な出会いを「ビビビッ」と感じ取れるような鋭敏な感覚が、私にも備わっていればいいのにと思う。「目の前にいるのは運命の人」だなんて、そんな自信も確信ももてないから、人はいつだって恋に惑い、苦しむのではないだろうか。好いた人と両思いになるのだって奇跡的なことなのに、関係を永続させていくのはもっと困難。ただ愛する人と幸せになりたいだけなのに、どうして恋愛というものはこんなにも難しいのだろう。

「鬼の花嫁」シリーズ(クレハ/スターツ出版)は、運命の恋を描き出す恋愛ファンタジーライトノベル。スターツ出版が運営する小説投稿サイト「ノベマ!」から誕生した累計発行部数16万部を誇る人気シリーズだ。人間とあやかしが共存する日本を舞台とした物語は幻想的かつスリル満点。それに加え、この物語には、愛することの喜びも難しさもギュッと詰め込まれているのだ。

 物語の舞台は現代。人間ならざる能力で世界大戦後の日本を支えたあやかしたちは、現代では、政治・経済・芸術と、あらゆる分野でその能力を発揮し、絶大な地位を確立している。そんなあやかしは時として人間の中から花嫁を選ぶらしい。あやかしには出会ったその瞬間に花嫁とすべき人間が分かるのだという。あやかしにとって、花嫁は自らの霊力を高める特別な存在。花嫁に選ばれた女性はあやかしから永遠に大事に愛し続けられることから、花嫁に選ばれることは、女性たちにとって憧れなのだ。

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 そんな世界を生きるごく平凡な高校生・柚子は、ある日、運命的な出会いを果たした。闇に溶けるような漆黒の髪。血のように赤い瞳。人間離れした美しい容姿――その男の名は、鬼龍院玲夜。あやかしたちを統べる「鬼」の一族の次期当主になる男だ。突然、玲夜から「俺の花嫁」だと求婚された柚子。玲夜との出会いは彼女の日常を一変させていく。

 あやかしからすれば、誰が運命の相手なのかは感覚で分かるのだろうが、人間はそうはいかない。現に柚子も突然の求婚に困惑。おまけに柚子は今まで誰からも愛された経験がなかった。両親でさえ柚子を愛さず、妖狐の花嫁に選ばれた妹・花梨ばかりを可愛がっていた。だからこそ、柚子は玲夜の全身全霊の愛に戸惑いを隠せない。愛される喜びを知れば知るほど、いつか失われる日を恐れてしまう。

 運命の人に出会えても、恋に困難はつきものなのだろうか。第1巻では、「鬼の花嫁」に選ばれた柚子を認めたくない妹・花梨や、玲夜の元婚約者で鬼の美少女・桜子が柚子の恋路を阻む。続く第2巻では、大学生になった柚子が玲夜に敵対心を抱く陰陽師・津守に狙われ、第3巻では龍の加護を持つ一族の令嬢・一龍斎ミコトが鬼の花嫁の座を奪おうとし…。だが、どんな試練が待ち受けていようと、玲夜の愛情は揺るがない。次第に柚子も玲夜に心を許すようになり、少しずつ、自分からも愛することを学んでいくのだ。

 そして、最新第4巻『鬼の花嫁四~前世から繋がる縁~』では、柚子は、初代「鬼の花嫁」にまつわる不思議な夢をみる。さらに、鬼をも脅かす謎めいた力を持つはとこ・優生の登場で柚子の身に危険が。玲夜は柚子を守り抜くことができるのか。深まる2人の関係からますます目が離せない。

 玲夜の柚子への寵愛ぶりに胸キュン。こんな風に誰かから溺愛されてみたいものだとちょっぴり羨ましくなる。そして、互いに思い合う2人の姿を見ると、「やっぱり恋はいいなぁ」と思わされる。1人でできないことも、誰かとならばできる。少しずつ自分に自信をつけ、玲夜の支えとなっていく柚子に勇気づけられてしまう。恋をしている人もしていない人も、あなたもこの恋愛ファンタジーを読んで自分の心をときめきで満たしてみてはいかがだろうか。

文=アサトーミナミ

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