人工物が何もない! 冒険心をくすぐられる絶景「秘境駅」の数々……

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更新日:2021/11/1

家で過ごす時間が増えた昨今。以前からの趣味や外で友人や仲間と集まって何かする、というのもなかなか難しい……なんて人も多いのではないでしょうか。そこで、1人でも楽しめる、密にならない! そんな魅力的な趣味やエンタメを本から見つけてみてはいかがでしょうか? それには何かを楽しんでいるマニアな先達から魅力を聞くのが一番、ということで、編集部おすすめの“マニア本”特集でお届けします!

旅鉄BOOKS039 ポツンと秘境駅 何もないから行ってみたい!
『旅鉄BOOKS039 ポツンと秘境駅 何もないから行ってみたい!』(「旅と鉄道」編集部/天夢人)

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 学生時代に通学などでよく使っていた、兵庫県を走るローカル電車「神戸電鉄(通称:神鉄)」。神戸市兵庫区から同市の北区、三田市・小野市方面へ向けて走っている電車なのだが、当時そんな神鉄の駅に「菊水山駅」という謎の駅があった(現在は廃止されている)。大きな駅の近くに存在しているにもかかわらず、「菊水山には止まりません」というアナウンスだけが流れてほとんど止まらないのだ。周囲に何もないうえ電車も止まらず、勇気がなくて降りたことはないのだが、それでも冒険心をくすぐられる気になる駅ではあった。

 そんなことをふと思い出させてくれたのが、この『旅鉄BOOKS039 ポツンと秘境駅 何もないから行ってみたい!』(「旅と鉄道」編集部/天夢人)。この本は、日本各地にある秘境駅を集めた本。本書にあるとおり、「周囲に商店がない」「民家がまったくない」「クルマで行く道もない」からこそたまらなく気になる秘境駅だが、しかしそれゆえにその場を訪れるのはなかなかに勇気がいる。でも、行ってみたいし冒険したい! そんな人なら、見入ってしまうこと間違いなしの一冊。

秘境駅巡りは、道のりそのものが極上の旅!

「秘境駅に行く」というのは、それ自体が冒険であり、たどり着くことによって大きな達成感が得られる。普段使わない路線のローカルな駅に降り立っただけでも「こんなところに来ちゃった!」というわくわく感が得られるのだから、秘境駅ともなればその感動を想像するだけでゾクゾクする。

 しかしその分、「トイレに行く」「腹ごしらえをしておく」などしっかり準備していく必要もある。駅から見えないだけで近くに集落などが存在することも多いそうだが、それでも何があるか分からない。飲料水や虫除けの持参、時刻表のチェックも必須だ。この時点でもう、冒険感がすごい! 「秘境駅」というジャンルを開拓した第一人者である秘境駅訪問家・牛山隆信さんも、秘境駅を取り巻く世界観について「人の往来を拒絶するミステリアスな駅」「未知の世界へ一歩踏み出す期待と恐怖が入り混じった感覚」と述べている。

圧巻! 全国各地に点在する秘境駅の数々……

 では、実際の秘境駅とはどんなものなのか。本書には現地の写真も多数掲載されているので、その中からいくつかピックアップして紹介しよう。まずは、牛山さんが自サイト内で毎年更新している「秘境駅ランキング」50位以内に6駅がランクインする “秘境駅の宝庫”「JR飯田線」の中でも随一の「小和田」(静岡県)。

旅鉄BOOKS039 ポツンと秘境駅 何もないから行ってみたい! P.44~P.45

 写真のとおり周囲には山と川(天竜川)しかなく、見渡す限り緑だ。目視できる人工物といえば、駅と木の陰に隠れている屋根のみ。ここで降りる人たちは、いったい何の目的でどこに向かうのだろう? と思考を巡らせてしまう。が、自分の目で見て隠れた絶景を探してみたくもある……。

 続いて、北海道に数ある秘境駅の中で秘境駅ランキング第1位に輝いたJR室蘭本線の「小幌」。

旅鉄BOOKS039 ポツンと秘境駅 何もないから行ってみたい! P.60~P.61

 駅周辺は一面深い森となっており、道がどこにあるのか、いったいどうなっているのかまったく分からない。唯一の出口は、なんと近くに見える小さな砂浜。そこが内浦湾へと続く入り江になっているらしいが、そこまでの道のりは崖路、洞窟ととても険しいもの。駅に降り立ち、ここを突破するだけでも十分自慢できそうだ。

 最後は、ネット上でも度々話題となっているダンジョンのような駅、JR上越線の「土合」(群馬県)。

旅鉄BOOKS039 ポツンと秘境駅 何もないから行ってみたい! P.77

旅鉄BOOKS039 ポツンと秘境駅 何もないから行ってみたい! P.78~P.79

 駅内にある看板に「日本一のモグラ駅」と書かれているだけあって、駅舎と下り線のホームの標高差が70.7mもあり、階段はなんと462段! あまりにも長いため、階段の途中に休憩用のベンチが置かれているとのこと。また、階段の横にエスカレーター用のスペースが空けられているが、エスカレーター自体はない様子。次ページに掲載されている緑豊かな上り線のホームと同じ駅とは思えない。……が、一度くらいこのダンジョンを制覇してみたくもある。

 紹介されているどの駅も、「これが日本に実在する駅……だと……」と思わず見入ってしまう、秘境中の秘境ばかり。この『旅鉄BOOKS039 ポツンと秘境駅 何もないから行ってみたい!』には、ほかにも「タビテツ編集部が選んだ47都道府県のイチオシ秘境駅」や「鉄道通に聞く!私の好きな秘境駅」など、数々のオススメ秘境駅が見ごたえのある写真とともに掲載されている。電車や秘境が好きな方はもちろん、「普通の場所では物足りない」「非日常が味わいたい」という人は、たまにはこうした“何もない場所”を探索して、いつもと違う世界、時間を感じてみては?

文=月乃雫

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