地図を片手に巡ってみたい! ポーランド人から見た、東京の“レトロ可愛い”店たち

文芸・カルチャー

更新日:2021/11/9

東京店構え マテウシュ・ウルバノヴィチ作品集

著:
編集:
出版社:
エムディエヌコーポレーション(MdN)
発売日:
東京店構え マテウシュ・ウルバノヴィチ作品集
『東京店構え マテウシュ・ウルバノヴィチ作品集』(マテウシュ・ウルバノヴィチ:著、サイドランチ:編/エムディエヌコーポレーション)

 街を歩いていると、観光地やガイドブックに載るような有名店でなくても魅力的なスポットは山ほどある。雨上がりの草木や奥に何があるのかと気になってしまう小道、廃墟のような建物や潰れないのが不思議なお店……。挙げればキリがないが、そんなふうに観察しながら歩いていても、日本人では見慣れていて見落としてしまう景色もある。

『東京店構え マテウシュ・ウルバノヴィチ作品集』(マテウシュ・ウルバノヴィチ:著、サイドランチ:編/エムディエヌコーポレーション)は、ポーランド人作家である著者が、ポーランド人の目線から東京にあるレトロなお店の魅力を紹介している本。このイラスト集は、元々はプライベートアートプロジェクトとして10店舗のイラストから始めたものだそうで、それに描き下ろしの40点を追加したのがこの本だ。

 マテウシュさんはアニメーションスタジオで背景作家をしていた経験があり、どのページを見ても趣のある、思わず惹きつけられるイラストばかり。でも実は、その一つひとつは日本のあちこちでよく見かける、昔ながらのお店たち。普段は目に留めることもないくらいに見慣れた風景で、これを丁寧に取り上げ魅力を深掘りするという発想は、普通の日本人にはなかなかないのではないだろうか。

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 例えば、秋葉原にあるという「岡昌裏地ボタン店」。

東京店構え マテウシュ・ウルバノヴィチ作品集

 上部の印象的な看板文字は、今は外されて黒い跡を残すのみだそうだが、お店のオーナーのスケッチをもとに再現したとのこと。文字が外された状態でこの建物を見つけたマテウシュさんの鋭い観察力に驚かされる。秋葉原というと、つい電気街、もしくはアニメや漫画などサブカル系のお店に目が行ってしまうが、だからこそ“そうじゃないお店”を見て回ると新たな発見がありそうだ。「雨戸」のことをスライドできるウィンドウシャッターとしてピックアップしているのも面白い。

 このほかにも、昔ながらの店に多いシンプルな太字で書かれた店名や、タイルの色や手触り、ベランダに干してある洗濯物など、とにかく目の付け所がすごい……!

東京店構え マテウシュ・ウルバノヴィチ作品集
▲看板の文字の作り方にまで言及されていて驚く。

東京店構え マテウシュ・ウルバノヴィチ作品集
▲本書では、こうした「人の暮らしの気配」も多数取り上げられている。

 背景作家として働いていたマテウシュさんだからこそ、目で見える風景の奥にある、そこに生きる人たちの生活にまで触れられたのかもしれない。

 また、後半では、江ノ島近くにあるというマテウシュさんのアトリエや実際に使用している道具の紹介、イラストの描き方なども掲載されている。

 アトリエも道具もイラストはすべて手描きで、一つひとつが大切にされているのが伝わってくる。イラストが下書きから完成へと近づいていく様子も、「こんなふうに描かれているのか」と思わず見入ってしまう。進捗ごとに丁寧な説明がなされているので、イラストレーターになりたい人や絵がうまくなりたい人にも良さそうだ。

 また、カバー裏は紹介されているお店がどこにあるのか一目で分かる地図になっており、これを見ながら実際に巡ることもできる(一部の店舗は既に取り壊されているとのこと)。「千駄木‐神保町エリア」「秋葉原‐日本橋エリア」「浅草‐北千住エリア」「赤羽‐品川エリア」「中央線沿線エリア」とエリアで区切ってあるので、休日に1つずつじっくりと回ってみるのも楽しそう。改めて回ることで、自分ならではの発見もあるかもしれない。

 日本人が見ているようで見ていない風景を切り取った、『東京店構え マテウシュ・ウルバノヴィチ作品集』。この一冊があれば、きっといつもの道が何倍も楽しくなる。筆者も、改めて見慣れた風景の見ていなかった部分を探してみたくなった。

文=月乃雫

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