はっきりした症状が出ない「脳梗塞」。発症サインを見逃さないためには!? 『名医が答える! 脳梗塞 治療大全』

健康・美容

更新日:2021/11/17

名医が答える! 脳梗塞 治療大全
『名医が答える! 脳梗塞 治療大全』(高木誠:監修/講談社)

 なにか変だと思っていながらも、たいしたことはないだろうと様子を見ているうちに手遅れになってしまう……。そんな恐ろしい一面をもつ病気が、脳梗塞だ。『名医が答える! 脳梗塞 治療大全』(高木誠:監修/講談社)は、脳梗塞の治し方や再発の防ぎ方をQ&A形式で教えてくれる1冊。発症時の注意点や脳梗塞の原因と仕組み、再発を防ぐための知識、リハビリなど、脳梗塞にまつわる知識を幅広く解説してくれる。

 監修は、東京都済生会中央病院名誉院長の高木誠氏。講演会やテレビ番組出演などをとおして急性期治療の重要性について啓発を続けている人物だ。

 脳梗塞を発症したときに、どうすれば的確に対応することができるのか? 再発を防ぐための方法とは? ここでは、本書の一部を紹介していきたいと思う。

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FASTで発症サインを見逃さない

 目の前で人がいきなり倒れたり、激しい頭痛で苦しんでいたら、誰でもすぐに救急車を呼ぶだろう。でも、脳梗塞では、そのようなはっきりした症状が出ないことが多いという。これが脳梗塞の厄介なところだ。

 しかし、脳梗塞の発症時には、多くの場合、サインとなる症状が現れるという。それをチェックできるのが「FAST」だ。

Face:顔の片方がゆがむ
 口を左右対称に開けて「イー」と発音してもらいます。そのとき、顔がゆがんでいないか確認。半身のマヒは顔にも同様に起こり、口角の高さが違ってきます。

Arm:片腕が上がらない
 目を閉じて、両方の腕を上げて水平に伸ばします。片方の腕が下がってくれば、そちら側にマヒがある可能性があります。

Speech:ろれつが回らない
「朝ごはんを食べた」「らりるれろ」など、簡単な文章を言ってもらいます。舌がもつれたようになって話せなかったり、意味不明なことを言ったりするときは、なんらかの異常があると考えられます。

Time:一刻も早く
「FAS」のうちひとつでもあてはまるなら、脳梗塞の可能性があります。本人をすぐに寝かせて、発症時刻を確認し、迷わず救急車を呼んでください。

名医が答える! 脳梗塞 治療大全 p10〜11
イラスト:後藤繭

 どの項目もごく簡単で、自分でも、周囲の人でもできるチェック法だが、どれかに当てはまったら脳梗塞発症のサイン。一刻も早く救急車を呼んで治療を受けることが大切だという。なお、FASに当てはまる症状が出ている場合は、その時間を確認しておくことも重要だ。脳梗塞の発症直後(超急性期)の治療法にはいくつかの選択肢があるが、なかでも重視されるのは4時間半以内に血栓を溶かす薬を投与することだという。発症時刻を確認しておくことで、その治療を受けられるかどうかがわかるからだ。

 なおFASTの3つ以外にも、脳梗塞の発症サインとなる症状はある。

・体の半身に力が入らない
・体の半身がしびれる
・めまい、ふらつき
・物が二重に見える、視界の半分が見えない
・物が把握できない、ものごとのやり方がわからない

 これらの症状を自覚したときには、脳梗塞を疑うべきだし、家族がこれらの症状を訴えるときにも、けっして軽く考えず、すばやく救急車を呼ぶこと。これが脳梗塞の治療のために大切なのだという。「脳梗塞の治療は、多くの医療分野のなかでも、最も進歩した分野のひとつです。早く気づいて早く手当てを始めれば、発病前とまったく同じまでに回復することも可能です。だからこそ、脳梗塞の症状を知っておいて欲しいのです」と高木氏は訴える。

再発を防ぐ鍵は、生活習慣にあり

 脳梗塞は、血栓などによって脳の血管が詰まり血流が途絶えた結果、その先の部分の脳細胞が死んでしまう病気。脳梗塞を発症しても、軽度だったり、早期治療でほぼ完全に治る人がいる一方で、マヒなどの後遺症が残る人も多く、寝たきりになったり、死亡する率も低くないという。

 そんな脳梗塞のひとつの特徴は、再発率が高いこと。さらにいえば、時間が経つにつれて再発率が高まり、発症後10年以内に約半数が再発しているというデータもあるという。再発によって脳細胞が死んでしまう部位が広がるため、障害が広範囲に及び、症状が初回よりも悪化しやすくなるというから要注意だ。

 では、脳梗塞の再発を防ぐには、いったいどうすればよいのか? その答えは、血栓を防ぐ薬の服用と手術となるが、それと同時に非常に重要になるのが、生活習慣をあらため、再発の危険因子を減らすことだという。

 再発の危険因子とは、高血圧、糖尿病、脂質異常症の3つの生活習慣病と、喫煙、不整脈のひとつの心房細動の5つ。

 この5つの因子を減らすため、まずは自宅で毎日、朝と寝る前に血圧を測定して記録し、管理することが大事だという。そうやって自分の体の状態を知ることから始め、「メタボ(肥満)の解消」「食事量」「減塩対策」「とるべき食材」「食べ方」など、本書が教えてくれる具体的な内容に取り組んでいくことが再発防止への第一歩だ。

名医が答える! 脳梗塞 治療大全 p131
イラスト:後藤繭

 食事のほかにも「リハビリと運動」「オススメの運動」「水分補給法」「禁煙の効果」なども解説してくれるので、再発が気になる方にとっても、その家族や身の回りの方にとっても役に立つはずだ。

 半身のマヒや言葉の不自由さなど、一度発症してしまったら、たとえ軽く済んだ場合でも、日常生活になんらかの不便さが残る可能性が高い脳梗塞。自分や家族の発症を未然に防ぎ、その発症サインを見逃さないために、そして、すでに発症してしまった方が再発を効果的に防ぐために、この1冊を役立ててもらいたい。

文=井上淳

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